~D*A doll~
これ以上、自分の姿を見るのが嫌になり最後にニッコリと鏡に笑って見せた。
そして、その笑顔を崩さず職員室のドアをノックして開ける。
「失礼しますぅー。転校?編入?してきた櫻井でーす」
明るく自分の名前を告げると、一人の男の先生がこちらへとやって来た。
あ、あの人が担任?と思ったところで。
……え?
その男の先生を見て固まる。
だってね?
ものすっごーーいカッコいいから。
「おぉ。櫻井か!電話で話した長瀬 咲哉[ながせ さくや]だ」
「………咲哉……先生?」
「おう!櫻井の担任だからよろしくな?」
……え、何このイケメン。
爽やかに笑って更にイケメンさが増している。
「よろしくしちゃうー!!」
そう言って先生にギューっと抱き着いてみた。
人に抱き着くことには抵抗はないし、あたしの中でこの行為にとくに意味はない。
「……は?ちょ、ちょっと!?」
もちろんいきなり抱き着いたわけだから、戸惑われてるけど。
それにぎゅーっと腕で押し返されるけど、離れないように更に腰に回す腕の力を込める。
ヤバ…!
すっごいタイプ!!
抱き着いてみた感じ、筋肉もしっかりしてる。
「は、ちょ、さ、櫻井!?ここ職員室!」
「櫻井じゃなくって。あたしのことは莉々香って呼んで!そうしたら離れてあげる」
上目使いで眺めてみる。
……あれだね、あたし、最初っからぶっ飛ばしちゃったね。
常識的に考えればいきなり抱き着くとか、下の名前で呼べと若干脅すとか捕まるレベルだけど。
そんなの関係ないし。
何て事を思いながらも周りをキョロキョロと眺め、焦っている先生を見つめ続ける。
すると一瞬だけ先生は眉を下げてから。
「…………莉々香、離れて」
あたしの思い通りの言葉をくれた。
「ふふふっ。これからも莉々香って呼んでよ?」
満々の笑みで先生から離れていく。
強引に物事は行った方がいいでしょ?
それにあたし櫻井って苗字大っ嫌いだし。