隣人




隣人は何が気に入らなかったのか、足早に怒ったような感じで帰って行った。やはり芸能人ということに気づかなかった事に腹を立てたのかな?


そりゃあそんなに芸能通って訳じゃないから一瞬で分からなかったのは悪いと思うけど。でも案外近くで見ると普通の人っていう感じだし、まさか隣にアイドルが住んでるなんて思いもしなかったし。


でもあの日、彼の温もりが私の冷えきった心を溶かしてくれたのは確かだ。あの事が無かったら未だにウジウジと太一を待っていたはずだから。


ふいにあの夜の事を思い出して体が熱くなった。ちょっとやだやだ。私ったら何を考えているの…。そんな自分が恥ずかしくて素早く頭から追い出した。


そんな事より、早く荷造りを進めなければいけない。不動産屋さんには明日にでも足を運んで新しい物件を見つけなきゃ。


これからの予定を立てながらお風呂に入り、そのあとすぐにベッドに潜り込んだ。


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