隣人
「ははーん、そういうこと。美月って意外と肉食だったのね」
「……」
とにかく今までの事情を包み隠さず話した。それを黙って聞いていた綾が発したのがさっきの言葉だ。
決してその言葉に反論は出来ない。自分でさえそう思ったのだから。
でもきっと貶されて説教されて嫌われると思っていたのに、意外な言葉が返ってきて私はどんな反応をしたら良いのだろう。
「あの…怒らないの?」
「黙ってたのは確かにムカつくけど、今さら言ったって過去は変わらないでしょ」
男気のある同僚で良かった。これだから私は彼女と友人でいられる。
「それより、太一は最低な奴だったわね」
「うん。でも私も悪かったのかなって思ってる」
「へーずいぶんサッパリしてるのね。もしかしてそれって九条奏多のせい?」
「やだ。そんなんじゃないし」
「好きなんでしょ?」
「好きじゃない」
「ふーん。まぁいいわ。ここは奢りなさいよ」
サッと立ち上がり真っ直ぐ出口に向かう綾。男らしくて女にしておくのが勿体ない。その背中を見送りながら私は会計を済ませた。