隣人



午後8時。
ようやくマンションにたどり着いた。部屋の鍵を取りだそうとした所でハッと思い出す。


そうだ。合鍵を隣人に渡したままだった。返してもらうためにはまた顔を合わせなければならず、かなり憂鬱だけどそこは仕方ない。


隣人のインターホンを何度か押すが反応がない。もしかして留守? 人の鍵を持ったまま出かけるとかあり得ない。


はー…これだから芸能人は。彼らに常識を求める方が間違ってるのかもね。仕方ない。明日にでも返して貰おう。


諦めて自分の部屋に入ると、なぜか電気がついてるし玄関には男物の靴があった。


まさか、まだいるの!?


私がダッシュでリビングに滑りこんだ先に見たものは、ソファーでテレビを見ながらビール片手にくつろぐ九条奏多の姿だった。


テーブルには宅配ピザの残骸まで乗っている。



「ちょっと、人の部屋でなにしてるのよ!」

「あぁお帰り。ビール戴いてたぜ」

「そうじゃなくて、なんで居るのよ」

「オフだって言っただろ」



あーっもう!そんな事を聞いてるんじゃないのに。まともに会話も出来ないのかこの男は。


こーなったら力ずくでも部屋から追い出してやる。

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