隣人



は、嘘でしょ?普通ここで見捨てる?
泣き崩れてる女がいたら優しく手を差し伸べたりするでしょ。


自分勝手に座り込んでいたくせに、あっさりと立ち去って行った男に対して急に苛立ちを覚えてとっさに追いかけた。



「ちょっと、待ちなさいよ!」

「あ"?なんだよ」

「泣いてる女をよく見捨てられるわね」

「自分で大丈夫だって言っただろ」

「そ、そりゃそうだけど…」



話がまだ終わってないのにエレベーターに乗り込む男。それを見て慌てて扉を抑え私も乗り込んだ。



「お前、ストーカーか?」

「違うわよっ。あんたが話を聞かないからでしょ!」

「ま、その調子じゃ本当にもう大丈夫なようだな」

「あ…」



男に言われて、今さら自分が泣いていた理由を思い出した。太一に捨てられたんだった。


浮気された挙げ句、子供まで作っていたなんて。太一にとって私はなんだったのだろう。


恋人以下の家政婦に成り下がっていたことに、今頃気づいた私は本当にどうしようもないダメ女だ。




< 4 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop