隣人
そういえば私は隣人の事を何も知らない。
それなのに体を重ねたのかと言われてしまえばそれまでなのだが…。
彼は綺麗な顔をしているし、そこらへんのサラリーマンじゃないのは明らかだ。夜の帰りも遅いようだしホストかなにかだろうか。
なんて事を考えながらランチをしていると、目の前に座る同僚の綾(あや)が読んでいた雑誌に目が釘付けになる。
「ちょ、ちょ、ちょっと貸して!」
「なに興奮してるのよ」
綾から雑誌をすぐさま奪い取りその表紙に目を凝らす。他人の空似?いや似てる。限りなく隣人に似ている。
でもこれが隣人だったとしたら…嘘でしょ。
あんな中堅マンションにまさか芸能人がいるなんて。
それにしてもあの男はアイドルという立場にも関わらず、同じマンションの隣に住む一般OLと簡単に寝たということになる。
そんなことってあるのだろうか…?
「なによ。美月ってアイドル好きだっけ?」
「まさか違う違う。絶対にないから」
「ふーん、怪しい」
そう言いながら綾は私の手から雑誌を取り返していった。