隣人
午前0時。
私はいま自分の玄関に座り込みあの男の帰りを待ち伏せしている。大体いつも帰ってくるのはこの時間帯だ。
眠気と戦いながらジッと外の様子を伺う。
あの男が部屋に入ってしまう前に絶対に捕まえてやるんだ。
暫くして1つの足音が聞こえきた。やっと帰って来た。いい加減待ちくたびれたわ。
私の部屋の前を通り過ぎようという絶妙のタイミングで、ガチャっと勢いよく扉を開けた。
「うおっ!あぶねー」
私があまりにも勢いよく開けたものだから、隣人に危うくぶつかってしまう所だった。
あぶない、あぶない。
芸能人に怪我をさせたなんて事になったら高額の慰謝料が請求されるはずだ。
そうならずにホッとした私とは裏腹に、不機嫌な顔をした隣人がドアに手をかけこちらを睨んでいた。
う…これはまずい状況かも。
「一体どういうつもりだよ」
「ご、ごめんなさい」
「答えになってねーだろ」
「あ、あなたに用事がありまして…」
オドオドと喋る私を一瞥したあと、また勝手に私の部屋に入り込む。先日と同じようにソファーに座り込んだと思ったら、また同じように食事を要求した。
いつから私はこの男の飯炊き女になったのだろうか。それにしてもこんなにお腹を空かせて帰って来るくらいならどこかで食べてくればいいのに。