隣人
私が差し出した庶民のご飯をガツガツとまた食べている。
芸能人っていつも美味しい物を食べているからたまに素朴なご飯が恋しくなるのだろうか?
それにしても食いっぷりが良すぎて驚く。
食べ終えた隣人はフーッと一息つくと、ソファーの背もたれに体を預け私の方へ視線を向けた。
何も言わずともその瞳は、用事はなんだと聞いている。質問を強要する態度に耐えきれず、意を決した私は口を開いた。
「あの、あなたって…九条奏多?」
「だったら、なんだよ」
「えーーーっ!!」
顔面蒼白になっていく私を見て隣人はさらに不機嫌になっていった。
「お前、知らなかったとかありえねぇ」
「そうですよね。…ははは」
「普通はもっと喜ぶとこだろ。俺とセックスしたんだぞ」
うぎゃあーー!!
そんな事を真面目な顔して言わないでよ。
あわあわとうろたえる私とは正反対に隣人は至って冷静だ。まぁ芸能人にとっては一夜の情事も日常茶飯事でそんなに驚く事ではないのだろう。
だが、あの夜のような行動を起こした事でさえ私は自分で驚いているのに、芸能人とエッチをしてしまったなんて更に追い討ちをかけるカウンターパンチだ。