Voulez vous du chocolat?
……結局、その作業は神無月君にほとんどやってもらっちゃった。
何度もレクチャーしてもらって、実践して……でも失敗して。
そのうちレクチャーしているうちにチョコレートもクッキーもなくなってしまった。
「じゃあ、これを冷蔵庫で冷やして。
もう冷やす時間がどうこうとか言ってる時限じゃないから、固まったら出していいよ。
そしたらもう完成だから」
そう言って、鞄を置いた方向へ歩き出す神無月君。
「え……帰るの?」
「うん? だってこの先、どうやっても失敗なんてできないから。
そしたらもう俺用ないじゃん」
なんで、とでも言うように笑う神無月君。
そ、それは確かにそうだけど……!
神無月君にチョコレート渡したいんだから、帰られたら困るのよ!
なんとか、引き止める口実を……。