イケメン王子の花メイド




「花がここに来た当初は、まさかこんな風になるとは思わなかった」


「それは……私もそうです」


「俺は人を好きになる気持ちも知らないような奴だったからな。ほんとに驚きだ」




その時、棗様は私の手を掴んだ。

ドキッと心臓が跳ねて、顔が一気に沸騰した。




「……花がここに来てくれて良かったと、心から思う」


「棗様……」


「これからもよろしくな、花」




穏やかな微笑みが間近で見える。

私は首が取れるんじゃないかってくらい頷いた。




「こ、こちらこそよろしくお願い致します!」


「……たまには敬語くらい外してもいいんじゃないか」


「えっ、そそそれは無理ですよ!?」


「もう婚約してるんだぞ。敬語だと距離を感じる」


「でもさすがにそれは……」


「命令だ」


「そ、そんなぁ~っ」




慌てる私を見て、棗様は眩しいくらいの無邪気な笑顔を浮かべた。


……棗様が笑うと、心が温かくなる。

棗様と一緒にいられるだけで幸せだ。


ここに愛があるだけで、何もかもが輝いて見えるんだ。

本当に素敵なことだよね。


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