あかつきの少女
「ねえ、海の方行ってみようか」

立ち上がり雫の手を引く。
繋がれた左手を見ると、雫はなんだか泣きたい気持ちになってきた。
それを海辺の公園に置き去りにして、二人は浜辺へと向かった。

公園から海まで5分とかからなかった。
砂浜の岩に腰を掛けると、楊子が口を開く。

手は自然とほどかれていた。

「ごめんね、私嘘ついてた。」

雫は静かに言葉の続きを待った。

「この間、まだ雫のこと好きかって聞かれたとき、好きだって言ったけど本当は……。」

「そんなの分かってた。あんな愛のない告白に気付かないほど鈍くないよ?」

「雫、私は、」

楊子は言いにくそうにしている彼女の手を取り、ギュッと握った。

Γさっきヨウに手を繋がれたとき、実はドキドキしてたの」

雫は頬を赤らめて笑った。

そんな彼女を見て、真剣な眼差しで言う。

「キス……する?」

握られた手の指を絡ませて、顔を少し近づけながら。

「え!?だってヨウ、私のこともう好きじゃないんでしょう?」

Γそう思ってた。でも、なんだか、変な気分なの」

俯いている楊子の表情は見えない。

雫は体を楊子の方に向けると、空いている右手で楊子の顔をそっと持ち上げた。
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