私たち、政略結婚しています。
バタン。
言い捨てて克哉は部屋を出て行った。
私はわなわなと震える唇をキュッと噛んだ。
ただ、好きなだけなのに。
秋本くんのことなんて、何てことはないのに。
どうしたら伝わるのかしら。私には克哉だけだと。
今までお互いに遠慮していたから言いたいことを思いきり言えなかった。
気持ちを伝え合い、通じると更に相手に対する欲望が募る。
克哉の独占欲に腹が立つのと同時に、嫉妬がくすぐったい。
「……私、ヘン……」
ケンカして嬉しいだなんて。
熱くなった頬を両手で押さえる。
チャリン。
その時、鞄の横のキーリングが形を崩して微かな音がした。
「……とっさとは言え…何なのよ、これ」
それを手に取り指にはめる。
今頃、怒りに任せてコーヒーを飲んでいるであろう克哉の顔を思い浮かべて私はクスッと笑った。