私たち、政略結婚しています。
「春を念頭においたものだけではなく、白を基調にした季節を問わずに着られるものを中心に展開していく予定です」
ぼんやりと彼を見ながら思う。
あんなにまとまりのなかった企画内容がいかにも意味を持って考えられたもののように聞こえる。
克哉の実力をまざまざと見せ付けられたような気分だ。
「ね、浅尾さん。伊藤さんって今フリーなんですかね?」
留美子ちゃんは彼の話を全く聞いてはいないようだ。
「あなた、黙って少しは聞きなさいよ。あなたもこの企画チームの一員なのよ」
「分かってますよ。ね、さっきの話ですけど。浅尾さんは伊藤さんと同期だから知ってるんでしょ?」
「…もう。本当に…」
私は彼女に注意をするのをやめた。
まさか『私が伊藤の嫁です!』とは言えまい。
結婚するときに言われたのだから。
『俺とお前が夫婦だって誰にも言うなよ。ばれたら別れるからな』
…ばれなくとも、いずれそうするつもりなんだろうと思った。
浅尾屋が落ち着いたら彼は私のそばにはおそらくいないだろう。
「お前。真面目に聞いてないとダメだろうが」
その時。
克哉が私の隣の席に戻ってきた。