私たち、政略結婚しています。
――「本当に実家に帰るのか」
服を着る私をベッドから見つめながら克哉は不満そうな声を出した。
「うん。今日は帰るってお母さんに言ってあるから。ご飯作って待ってると思うから」
「お前。旦那の飯はどうするんだよ」
「あんたは私より料理が得意でしょ。何でも作れるじゃない」
「ひでぇ」
私は彼をなるべく見ないようにしながら立ち上がった。
「じゃ。行くわ」
そんな私の手を克哉はギュッと掴んだ。
「何?」
「…帰って…来るよな?」
彼を見ると、その瞳が不安そうに私を見上げている。
「と、とりあえずはね。荷物や手続きもあるし」
「佐奈!」
私はその手を振り払うと一気に駆けて部屋を出た。