チェンジ type R
第四章
 電車に乗るまでの流れは存外スムーズなものだった。
 駅前という人が集まる場所、本当に隼人くんの知り合いに会ってしまうのではないか、そんな心配は杞憂に終わったようだ。
 ここまでは誰にも話しかけられるようなことも無く、ホッと胸を撫で下ろす。

 駅前に向かう直前、道端に捨てられたガラス板に映る隼人くんに再度『お金、貸してね』と確認を取った。
 このガラス板から立ち去れば、きっと電車に乗るまで隼人くんとコミュニケーションを取るのに適当な場所があるとは思えないからだ。

(ち……仕方ねえな)

 渋々ながらお金を貸しておいてくれることを承諾してくれた隼人くん。
 財布の中には五千円札が一枚に千円札が二枚。後は小銭が少々……。
 その中身が心細い財布の中からお金を借りて希望が丘駅から快速で一区間、普通電車ならば四つほど――私の住む光が丘駅までの切符を買った。
 改札を通り、電車を待つ間――私はできるだけ考え事をしながら待つ。

 隼人くんが私の考えていることが聞こえるならば、この空いてしまう時間の間これまでのことを思い返しておけば、わざわざこれまでの行動と、その動機の説明する手間が省ける――そう思ったからだ。
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