チェンジ type R
 だって、自分の野生のカンだけを頼りに歩いたんだもん。
 駅の気配なんて感じることは出来ないし。
 
 大体さ、駅の近くなのに何でこんなに人の気配の無い道なのよ!
 文句の一つも言いたくなるような、駅前にあるまじき細道だ。
 仮にも駅前の道なのだから、どんな細道であろうとも人影くらいはあっても良いのではないだろうか?
 駅前という繁華街に人が居ないというのは、それこそ都市計画に重大な欠陥が……って話がズレた。

 と、とりあえず、だ……言いたいことは数多くあれど。
 道を知らなかったことも、道に迷いかけていたことも厳然たる事実なのだ。
 一応、コクンと小さく首を縦に振って隼人くんに肯定の意思を示す。
 隼人くんは両手を広げ、首を横に捻って呆れるような、驚いたような、そんなゼスチャーを見せた。

(ズンズンと迷いなく近道へ進んで行くから……てっきり道も知ってると思い込んでたよ)

――へ? ち、近道ぃ!? 私、近道を通ってたの?

 私の思ったことが聞こえたのだろう。
 隼人くんが大きく頭を縦に振る。
 何を今さら、といった感じだ。不思議そうな顔で私を見ている。

 道に迷った――そう思い込んでいたが、どうやら私は無意識に『正しい道』を進んでいたらしい。

――ナイス!ナイスだ!野生のカン!!
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