Favorite voice
「楓ー? 」
「どーしたん? 」
「帰りたくない…… 」
「そんなん俺も帰したくないに決まってるやん 」
私達は新幹線の改札口へと来ていた
楓は明日から仕事だから
私は今日帰らないといけなくて
でも…やっぱり離れたくないよぉ
私は泣きそうになりながら
唇をギュッと噛み締めた
「またすぐ会えるわ 」
「そうだけど…… 」
私は涙がいっぱいに溜まった目を
改札口へと向けた
「時間……行かなくちゃ…… 」
「ほな、またな 」
ーギュッ
楓は力一杯私を抱きしめて
改札口の方へ背中をトンッと押した
「遅れるで? 」
「うん……またね…? 」
「おう、またな
気いつけて帰りや? 」
「ん、ありがとう 」
私は後ろを振り向かずに
新幹線のホームへ向かった
ギリギリだった為
ホームに私が着くと同時に新幹線が到着した
新幹線に乗り込んだと同時に
溢れ出した涙はなかなか止まる事はなかった
一生のお別れなんかじゃないのに
どうしてこんなにも
涙が止まらないんだろう
さっきまで隣に居たなんて
嘘みたい……
ほんの数分離れただけでも
そう思えた