負け犬も歩けば愛をつかむ。
四月最後の金曜日、仕事が終わった私と真琴ちゃんは、メルベイユの雑貨屋に立ち寄っていた。
帽子を被っていたおかげでボリュームがなくなった私の髪を、真琴ちゃんはガーベラの花がアクセントになっているシュシュで纏める。
「これは……うーん、ちょっと若作りした感が出ちゃうかなぁ」
サッとそれを取り、次に頭に付けられたのは、大きなリボンが付いたピンク色のカチューシャ。
「これは……ククッ、小学生のお遊戯会って感じ?」
眉根を寄せる私に続いて被せられたのは、派手な飾りが付いたツバが異様に大きい帽子。
「こ、これ……はははっ、なんか勘違いした女優みたーい!」
「完璧ふざけてるでしょ!」
自分の頭から帽子を取った私は、それをお腹を抱えて笑う真琴ちゃんの頭にガバッと被せた。
明日に決まった歓迎会で、いつもと違う私を見せた方がいいという話になり。
『やっぱり印象を変えるならまず髪でしょう!』と言った彼女が、いいヘアアクセを選んでくれると言うから、連れられてやってきたのだけど……
さっきから私で遊んでばっかり!
「ごめんなさぁい。千鶴さんとこうやって買い物するの初めてだから、ちょっと楽しくなっちゃって」
てへ。と舌を出して笑う、悪びれた様子もない小娘に、まったく……とため息を吐き出した。