負け犬も歩けば愛をつかむ。
──久しぶりに、しかもかなりスピーディーに恋に落ちた。

そう宣言しなくても、もう三人の中では私が椎名さんのことを好きだということで話はまとまっているらしい。


だからなんとか私達をくっつけようと、明日の歓迎会のために色々な計画を練ってくれた。

……と言っても、“酔ったフリして介抱してもらえ”だの、“そのままホテルに行ってしまえ”だの、やっぱり突飛な方向に話を進めてしまう彼ら。

それを軌道修正しながら、結局最終的に決行することになった計画は、お酒を飲んだ椎名さんを私が送迎してあげる、というものだけだった。


その計画のために、選んだ場所は駅前にある創作料理のレストラン。椎名さんには電車で来てもらうことになっている。

私は車で来て、自然と彼がそこへ乗るように皆が気を利かせてくれるらしい。

……さり気なく気を利かせるというのが皆に出来るのか、ここが一番の不安要素なんだけど。


でも、私も職場以外で椎名さんと二人きりになったことがないから、緊張するけど好奇心の方が強い。

プライベートな彼はどんな感じなんだろう。いつもと違った話が出来るのかな。

なんて、妄想と期待を膨らませていたりする。



丁寧に並べられたヘアアクセの心惹かれたものを、一つ手に取ってみた。

スパンコールやレースの刺繍が可愛い、アンティーク調の小さなバレッタ。こんなお洒落な小物は何年してないだろう。

たしかに、せっかく職場以外で会うんだから、いつもとは違う自分を見てもらいたい気はするよね……。

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