負け犬も歩けば愛をつかむ。

紺色の布地に色とりどりの花が咲いた、膝が見えるくらいの丈のシフォンワンピース。

これを着て姿見の前に立つのは何年ぶりだろうか。

自分のアパートに帰ってきて、さっそくクローゼットを漁ってはみたものの、私が持っている女子力高めの服はそんなに多くないから、比較的早く見付けられた。



「でもなんか子供っぽい?」



くるりと一回転してみるけれど、童顔のせいかどうも幼く見えてしまう。これでも一応、身長は百六十ニセンチあるんだけどな。


……椎名さんは百八十くらいはありそうだよね。

水野くんは小柄だからたいして身長差を感じないけれど、椎名さんの近くにいると自分が小さい女子になったような感覚がするんだ。

なんかこう、守られたいっていうか、包まれたいなぁなんて……



「……って、妄想するな私!」



一人ニヤけていたキモチ悪い顔を軽くぱしぱしと叩き、再びクローゼットを開ける。

まだ一度も使っていない、いつかお母さんから貰ったストールがあったことを思い出して引っ張り出した。

試しに首に巻いてみると。

……うん、これの方が大人っぽく見える!


鏡の中で笑う私は、自分でもわかるくらい本当に“恋する乙女”になっていた。

気がつくと椎名さんのことばかり考えているし。


彼はどんな女性がタイプで、今までどんな恋愛をしてきたのか、まだ何も知らないけれど。

少しでも私を“女性”として意識してもらいたいな──。
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