負け犬も歩けば愛をつかむ。
そして迎えた歓迎会当日。

久しぶりにアイラインを引き、しっかりマスカラもつけた。でも濃いメイクにならないように、基本ナチュラルで。

そして、自分に魔法をかけるようにアプリコット色のリップグロスで唇を彩る。

ちなみに、これはいつかの誕生日に友達がプレゼントしてくれたもの。初めて使う時が来たわ。


最後に、昨日買ったバレッタを付けてみた。

……うん、まぁこんなもんか。

正直自分では変身が成功しているのかどうか微妙だけど、少なくともいつもの疲れたアラサー女ではない。はず。


鏡に向かって作った笑顔を確認して、小さく気合いを入れた私は。

カーディガンを羽織ってストールを巻き、ショートブーツを履いて家を出た。



待ち合わせは午後六時。

夕闇が迫る土曜日の駅前は賑やかで、仕事帰り風の人はあまり多くない。

レストランには駐車場がないため、コインパーキングに車を停めて、皆で決めた集合場所であるロータリーの時計の下に向かった。

すでに揃っていた三人の、私を見た第一声は。



「「誰！？」」

「……失礼ね」



まぁ、冷やかされることは重々承知していたけど。



「ほら、やっぱりちゃんとメイクしたら綺麗なお姉さんですよ！」

「ほんと！　千鶴ちゃんべっぴんさんだわ～」

「ちづ、やっぱりマネはやめて俺と付き合おうぜ？」

「ありがとう、水野くん以外」



唇を突き出すチャラ男の横、女三人で盛り上がっていると、私のスマホが着信を知らせた。

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