負け犬も歩けば愛をつかむ。
「料理って見た目も重要なんじゃないの? 到底美味しそうに見えないんだもの」



リボンがついたブラウスにピンクのフレアスカートという、きれいめな服装に不似合いな仁王立ちをする彼女は。

ビジューが輝くゴージャスなネイルが施された指先で、目の前の白和えをちょいちょいっと指差す。


白和えはひじきやほうれん草、人参が入ったレシピ通りのもので、もちろん味見もしたからそれは保証出来る。

ただ、これが出たのは私が来てから初めてで、園枝さんもかなり久々だと言っていた。

菅原さんは幼い頃は外国で暮らしていたようだし、もしかしたら白和えという料理自体見るのが初めてなんじゃ……。



「あの、すみませんが、白和えっていうのは豆腐を混ぜるものなので、見た目がこうなってしまうのは仕方ないというか、当然というか……」

「じゃあ、この黒いのだけでも取ってください」



無茶言うな!!

と、喉元まで出かかるも、それをぐっと飲み込む。

何なのこのお嬢様……誰か攻略マニュアルをください!!



「あのなぁ、アンタ一人のためにそんなこと出来ないんだよ。嫌なら食わなきゃいいだけの話だろーが!」

「あら、こっちはお金払ってるのよ? あたし達が満足出来るようなものを作るのがアナタ達の仕事でしょう?」

「お~ま~え~~!!」

「ちょちょちょ、水野くん落ち着いて……っ!」

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