負け犬も歩けば愛をつかむ。
専務室では、ちょうど専務が電話を終えたところだった。
これから食堂へ向かおうと思っていたという彼に、今起きたことを説明して謝罪をし、「申し訳ありませんでした」と二人で頭を下げる。
「そうでしたか。こちらこそ、うちの社員が失礼なことを言ってすみませんでしたね」
終始冷静な表情で話を聞いていた彼は、私達に和やかな声を掛けてくれた。
顔を上げた私は、やっぱり専務はわかってらっしゃる!と心の底から安堵した……のだけれど。
「──だが、その程度でキレるとは、やはりあの彼は単細胞だと言わざるを得ませんね」
………………はい?
“その程度”? “単細胞”?
専務の口から飛び出た聞き捨てならない言葉に、安心して緩みきっていた口元がピシッと固まる。
彼は微笑みながらも、冷たさを含んだ切れ長の瞳を私に向けた。
「水野くん、といったよね?」
「あ、はい……」
「いつか彼は何か問題を起こすんじゃないかと思っていたんです。見た目からして軽薄だし、以前から女性社員に軽々しく声を掛けていたりしたでしょう」
あぁ……そういえばそんなこともあったっけ。
でも別に女の子も迷惑そうではなかったし、むしろ楽しんでるように見えたから特に気にしてなかったんだけど。
ていうか、今の発言を言い換えれば、専務の中で水野くんは“チャラついてるから要注意人物だった”ってことよね? それってかなりの偏見では?
これから食堂へ向かおうと思っていたという彼に、今起きたことを説明して謝罪をし、「申し訳ありませんでした」と二人で頭を下げる。
「そうでしたか。こちらこそ、うちの社員が失礼なことを言ってすみませんでしたね」
終始冷静な表情で話を聞いていた彼は、私達に和やかな声を掛けてくれた。
顔を上げた私は、やっぱり専務はわかってらっしゃる!と心の底から安堵した……のだけれど。
「──だが、その程度でキレるとは、やはりあの彼は単細胞だと言わざるを得ませんね」
………………はい?
“その程度”? “単細胞”?
専務の口から飛び出た聞き捨てならない言葉に、安心して緩みきっていた口元がピシッと固まる。
彼は微笑みながらも、冷たさを含んだ切れ長の瞳を私に向けた。
「水野くん、といったよね?」
「あ、はい……」
「いつか彼は何か問題を起こすんじゃないかと思っていたんです。見た目からして軽薄だし、以前から女性社員に軽々しく声を掛けていたりしたでしょう」
あぁ……そういえばそんなこともあったっけ。
でも別に女の子も迷惑そうではなかったし、むしろ楽しんでるように見えたから特に気にしてなかったんだけど。
ていうか、今の発言を言い換えれば、専務の中で水野くんは“チャラついてるから要注意人物だった”ってことよね? それってかなりの偏見では?