*花は彼に恋をする*【完】

私の顎に翔英さんの手が添えられ

彼の指から伝わる体温に

胸がドキドキして甘い痺れが伝わる。

彼の漆黒の瞳に私が映り

「…玲花。」

私を呼ぶ低いけど甘く優しい声に

私の瞳は逸らせないくらい

彼の瞳と熱く絡み合おうとしていた。

「…翔英さん。」

大好きな彼の名前を呟くと

私の顎が軽く持ち上げられて

漆黒の瞳がゆっくりと近付く。

これから起こる事に緊張して

私の顔が紅くなり始めて

胸がドキドキするけど

迎え入れるように

そっと瞳を閉じた私の唇に

彼の唇が優しく重なった。

ピクッと震えた私の後頭部を

引き寄せるように抱き締めながら

優しく味わうように動く唇に

「……んっ。」

全身が甘く痺れそうになり

背中に回した腕に力を込めた。

上司と部下だった私達。

夜景の綺麗な高台にて

ずっと大好きだった彼と

恋人関係になって初めて交わすキスに

身体の奥底から嬉しさが込み上げて

「……っ、うっ…。」

私の目から涙がポロポロ溢れた。












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