彼となら、   熱くなれる
「先生、着きましたよ。」

「ありがとうございます。」

「僕からも礼を言いたい。今日はありがとう。先生のお蔭でどれほど僕が助けられたかしれない。感謝しています。」

「いいえ、私はできることしかしなかった。雷に震えるばかりで恥ずかしい。」

「それは今だから言えることだ。あの時は誰もが必死だった。」

暗い車内で沈黙が続いた。

外はまだ雨が降り続いていた。

「森下さん、私、もう一度感じたいの。あなたにキスしてもらいたいの。ダメ?」

彼の柔らかい視線が応えだった。

ホテルの部屋で愛し合った。

二人で浴びたシャワーは熱く、冷たい雨に濡れたことを忘れさせてくれた。

彼はシャワーの下でキスしてくれた。

私はもう一度うっとりできた。

「先生、いい響きだな。ドクターという偉い人をこんな風に抱けることに興奮する。」

「森下さん、その興奮が冷めないうちにお願い。私、期待してもいい?」

「いいよ、雷は気まぐれだが、僕はそうじゃない。いつでも言っていいよ。但しシュラフの中ではダメだ。窮屈だからね。」

数時間前は冷え切っていた私たちの体は今は灼熱の中にあった。

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