雪恋ふ花 -Snow Drop-
3時の休憩で、この間ピザを食べたカフェに座っていた時、春人がふいに言った。
「気づいてる? 足、閉じてきてるの?」
「え?」
「もうほぼ、パラレルになってる」
「ほんと?」
珠は一瞬笑顔になるが、すぐ表情が曇る。
「どうした? うれしくない?」
「ううん。春さん、ほんとにありがと」
珠は慌てて言った。
もう、春人とスキーをすることもなくなるのだというさみしさがこみあげてきた。
「いや、俺はべつに……」
夕方いつかの林道を通って、南ゲレンデに戻ってきた。
初めての日にこわごわ横切った斜面も、今は普通に滑ることができた。
宿に戻ると、入浴を済ませ、こたつで二人はいつしか眠っていた。
夕食の電話で目を覚ます。
今日も手のこんだ和食メニューが並んでいた。
春人は熱燗でほろ酔い気分だった。
部屋に戻ると、移動初日のあの心地良い疲れが押し寄せてきて、二人はそのまま布団を敷いて、ぐっすり眠ってしまった。