雪恋ふ花 -Snow Drop-
蕎麦を食べ終わると、春人はさっさと二人分のぜんざいを注文した。
「甘いもの、好きなんですか?」
「普段はそんなに食べないけど、ここのぜんざいは格別なんだ。蕎麦より、そっちが目当てって言ってもいいくらいだ」
「ありがとう」
ふいに、珠が言った。
「えっ?」
春人は意味が分からず、不思議そうな顔をする。
「春さんって、本当にいい人ですね」
「はぁっ?」
「初めて会って、迷惑かけたのに、こんなおいしくて素敵なお店にわざわざ連れてきてくれて」
「いや……」
春人は目を伏せてつぶやくように言った。
「嫌いになってほしくないから」
珠は首をかしげる。
「何を?」
「ここ」
珠は次の言葉を待った。
「俺、好きなんだよね、このスキー場。だから、嫌な思い出にしてほしくないんだ」
その瞬間、珠は涙がこぼれそうになるのを必死にこらえていた。
知らない所で、一人ぼっちで、心細くて、そんな時にこんなふうに無条件に優しくされたら、どうしていいかわからなくなる。