雪恋ふ花 -Snow Drop-

5分ほどでリフトを降りる。

「俺の後についてきて」

そう言って、春人は颯爽と滑り出した。
見とれるほどにきれいなフォームだった。
あっという間に、上級者コースとの境まで行くと、キュッと止まり、後ろを振り返って、ストックを振って合図する。

「えい」という気持ちで滑り出した珠はボーゲンでどうにか、春人のいる近くにたどり着く。

「次はコース横切るからな。ほぼまっすぐ進むぞ。あまり下に降りすぎると、後で登らないといけなくなるからしんどいぞ」

「はい」


また、あっという間に、春人は林道の入り口に着くと振り返って合図を送る。
上から上級者が来ないかよく注意して、珠はそろそろと滑り出す。
新雪にずぼずぼと板がはまりこみ、途中でスキーが止まってしまう。
斜度がかなりあり、段違いにしている足が辛い。
下を見ないように、体は山に倒すように、自分に言い聞かせて、
ストックを突き刺して、一歩ずつ漕ぐようにして進む。
汗だくになって、やっと林道の入り口に着いた。

「がんばったな。ここからは、ほとんど人が通らないから安心して。後ろから誰か来たら、山側に寄って止まって、先に行ってもらうといい。あとは自分のペースでゆっくり降りてきたらいいから。初級コースだからな」

春人は安心させるようにそう言った。
まるで、スキーのインストラクターみたい、珠は思った。
賢(けん)ちゃんはさっさと一人で行っちゃったけど、こんな親切な人もいるんだな、そんなことを考えながら、カーブの手前に来ると振り返って待ってくれている春人の後を追いかけた。
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