雪恋ふ花 -Snow Drop-

蕎麦を食べ終わると、春人はさっさと二人分のぜんざいを注文した。

「甘いもの、好きなんですか?」

「普段はそんなに食べないけど、ここのぜんざいは格別なんだ。蕎麦より、そっちが目当てって言ってもいいくらいだ」

「ありがとう」

ふいに、珠が言った。


「えっ?」

春人は意味が分からず、不思議そうな顔をする。


「春さんって、本当にいい人ですね」

「はぁっ?」

「初めて会って、迷惑かけたのに、こんなおいしくて素敵なお店にわざわざ連れてきてくれて」

「いや……」

春人は目を伏せてつぶやくように言った。

「嫌いになってほしくないから」


珠は首をかしげる。

「何を?」


「ここ」


珠は次の言葉を待った。



「俺、好きなんだよね、このスキー場。だから、嫌な思い出にしてほしくないんだ」


その瞬間、珠は涙がこぼれそうになるのを必死にこらえていた。
知らない所で、一人ぼっちで、心細くて、そんな時にこんなふうに無条件に優しくされたら、どうしていいかわからなくなる。

< 22 / 181 >

この作品をシェア

pagetop