雪恋ふ花 -Snow Drop-
「あのリフトに乗って、右手の林道に入るから、そこ目指して滑って」
ゲレンデに戻ると、春人がストックで帰り道を示す。
「あそこの上、上級者コースだから、気をつけて。左手見ながらコースを急いで横切るからな」
「はい」
リフトは二人乗りだった。
カタカタカタ。
リフトの音だけが響く。
鳥のさえずりを楽しむために、音楽もラジオも流れていないゲレンデは、よけいな音が何もしない。
時々、リフトの下を上級者が雪を散らす、シュッシュッという音が聞こえるくらいだ。
「あの、春さんはもっと滑らなくて良かったんですか?」
「俺も今朝着いたばかりだから、今日は体ならし。早目に帰って休もうと思って」