雪恋ふ花 -Snow Drop-
――― プップッー。
クラクションの音に顔を上げると、目の前に車が止まっていた。
助手席の窓を開けて、顔をのぞかせたのは、春人だった。
「ここで、なにしてる?」
「あ、えっと……」
珠は慌てて涙をぬぐって、立ち上がる。
「友達と待ち合わせ?」
「バス、待ってるの……」
珠の様子がおかしいことに気づいた春人がシートベルトをはずして、車から降りてきた。
「まさか、一人で帰るとか言わないよな? 連れはどうした?」
「えっと……あの、私だけ早く帰らなくちゃいけなくなって、それで一人で、バス……」
そこまで聞いて、春人は珠の言葉をさえぎった。
「とにかく乗って」
「いえ、だいじょうぶです。もうすぐ、バス来るし」
珠はこの期におよんでなお、遠慮していた。
「いいから、乗って。駅まで送るから。このまま雪の中に立ってると、雪だるまになるぞ」
春人が半ば強引に腕をつかんで、珠を助手席に座らせると、有無を言わせず荷物をトランクに詰め込んだ。