雪恋ふ花 -Snow Drop-
不機嫌な表情で春人は車を発進させる。
「春さんはどこまでですか?」
「おんなじ」
「え?」
「俺も大阪。だから、家まで送ってやるよ」
「でも、そんな、悪いから……」
慌てて断ろうとする珠を、春人がじっと見つめる。
「また彼氏に怒られるからか?」
春人の視線がつきささる。
「いや、そうじゃなくて、春さんにこれ以上迷惑かけたくないから」
「だったら、ガソリン代と高速代、割り勘にしよう。そしたら、俺も助かる」
「ありがとう…お願いします……」
春人はいつも珠の心を軽くするすべを心得ている。
お金に困っているわけではないことは百も承知だが、それでもこんなふうに言ってくれる春人の優しさに、珠は甘えようと思った。