雪恋ふ花 -Snow Drop-
終業後はさっさと帰宅し、自分の時間に当てるはずが、今日はあいにく同僚と出かける予定があった。
送別会の幹事を任され、その下見に店を見に行くことになったのだ。
春人は面倒と思いながら、会場のフレンチレストラン「Bonheur(ボヌール)」へ向かう。
繁華街から少し離れた路地に面してひっそりと建つその店は、創業40年。
木製の扉を開くと、シックな調度と落ち着いた照明で囲まれたたたずまいに、春人は思わずあたりを見回した。
フロアに入ると、雰囲気が一変して、明るく華やかなしつらえになっていた。
奥のテーブルへ案内され、さっそく打合せが始まる。
退職する上司を送る会は総勢10名で、日程と料理の相談を簡単に済ませて、せっかくだからと食事もして帰るつもりだった。