雪恋ふ花 -Snow Drop-
コース料理のメニューに並ぶ、よくわからない料理名を読んでいる時だった。
同僚の沼田麗子が声をひそめて言った。
「あの子、どう見ても中学生じゃない? 一人で来たのかな?」
春人が麗子の視線の先に目をやると、ちょっとくせ毛のあるボブカットの小柄な女の子が座っていた。
しばらくして、それがもう二度と会うことはないと思っていた、珠であることに気づいた。
春人は店員に尋ねると、連れが急に来られなくなったのだと言った。
その瞬間に、嫌なやつの顔が浮かんだ。
また、あいつなのか?
店員に事情を話し、彼女に同席の許可を求める。
店員から話を聞いた珠がこちらのテーブルを振り返って、目を丸くした。
「春さん」
春人のスーツ姿を珠は初めて見る。
ヘアスタイルもびしっと決まっている。
スキー場とは全く違う、大人モードの春人に、年上の男性であることを改めて実感していた。
春人が軽く手を挙げる。
珠の笑顔が、向かいに座る女性の姿を見て、一瞬曇った。