雪恋ふ花 -Snow Drop-

「珠ちゃんは絶対に言わないと思うから、言わせてもらうけど、今日予約していたお店、ご家族との大切な思い出があるみたいよ。私達が行った時、一人で二人分のお料理食べてたわ」

「……」

「珠ちゃんって、ほんとにいい子ね。恨み言一つ言わずに、ずっと笑ってた。2時間一緒にいただけで、すっかりファンになっちゃった」


春人が珠を抱えた腕にぐっと力をこめる。
その瞬間、珠がかすかに身じろいだ。

もしかして、起きてるのか?
今目をあけたら、まずい。

春人が珠の背中をあやすように、ぽんぽんとたたいた。
気づいてくれ、この意味に。

「とりあえず、寝かせてやりたいから、入らせてもらうぞ」

それまで黙っていた春人が静かに言った。
賢は黙って、通路をあけるしかなかった。

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