雪恋ふ花 -Snow Drop-

珠は幸せな気持ちで家に帰ってきた。
早く部屋に入って、あの写真集をじっくり眺めたいと思って、急いで玄関のドアを開けた。

すると、そこには女物の靴が置いてあった。

まさか、そんなはずはない。

嫌な予感を打ち消すようにリビングのドアを開けると、自分のベッドの上に、賢と見知らぬ女性が座っていた。


「また出かけてたのか、あいつと。
今日は帰らないのかと思った」

「人の部屋で何してるの?」


どこからそんな声が出たのかわからない。
けれども、もう止めることはできなかった。
この4年間、ずっとためこんでいたものが一気にあふれだした気がした。


「鍵、返して。早く出てって。 二度と来ないで!」


珠は一息にまくしたてた。
一緒にいた女性は険悪な雰囲気にそそくさと部屋を出て行った。

賢はわざと、ゆるゆると時間をかせいでいるようだった。


「おまえだって、何してるんだよ? 2週間前の週末、誰とどこ行ってた? 知り合いが見たんだってよ。スキーバスから男と降りてくるところ」

「それがどうしたの? パラレル滑れるようになりたくて、春さんに教えてもらってただけだよ。私はしてないよ。賢ちゃんを裏切るようなこと、何も。夜行バスで行って、次の日の夜には帰ってきたもの」

「まあ、今となってはどうでもいいけど。おまえ、あの日からおかしかったよな? 4人でスキーに行った時から」

「え?」
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