士農工商犬猫ドンバ

対バン ニューオリンズ


5月なのに、まだちょい寒い牛田の寮。

イズミと俺の部屋。炬燵上にはポータブルプレーヤーと
溝が白くなったシングル盤。

周りにはルービの空き缶やマミツが散らばり、
壁にはユニフォームがぶら下がり、奥にはターギとベースが
立てかけて置いてある。

ふとんの上には犬のソーク。これだけは慣れねえ。ぐうえ


昨日一人で遅くまで練習してたユキオがもう起きてる。

「ミミ・・ミミさん ねえ起きて下さいよ」

・・なんだよ・・何時よ。
 
「11時ですよ。 ねえ、そんで聞いて下さいよ。
隣のヤーヘにタイバンの奴等いましたよ」

知ってるよ。 京浜プロが入れてんのが先月から来てんだ。

まず、タンメくれ。

「ほぃ、メンソールっすよ。そんで今朝、あんまりうるせえんで
見に行ったら、丁度帰ったとこで皆でパイイチやってたんすよ」

「そんでさあ・・・」

ん? お前さあ、タイバンともめたらビークだよ、
ギャラ無しだよ、わかってんの。

「何もやってないっすよ。 そんで行ったらルービ飲まされてさ」

なぁんだよ。 おお・・そんで?

「へっへ、あいつ等ダチトモみたいっすよ。
髪の毛長え海藻パーマとノッポのホフナー。ミミ知ってんでしょ」

パーマ? 知らねえな・・ホフナー? えぇ?マーちゃん?

「そうっす、当たり。 ニューオリンズって言ってましたよ」

じゃあ秀ちゃんか。パーマかけたんだ。 皆起こすか。


「イズミ、こばちゃん、起きてる?」

・・うん?どしたのよ

「そういうわけで、ユキオが見てきてさニューオリンズ来てたよ」

おぉそうかよ。ボーカル入れて音まとめにきたんだろな。へえ
 
「俺はまだよ。 ユキオしか会ってねえけど」

知ってるドンバでよかったじゃん。
じゃあシーメ食ってセーミ行こうぜ。

そうだな。 じゃ顔洗って手持ちの支度だ。


「ユキオよ、そのボンズ何とかなんねえのかよ。
つんつるてんじゃねえか」 

俺できねえっすよ。ナオンでもいなきゃ。

「村さん履いてたやつだしな。ミミよ誰かナオン都合してやれよ」

「冗談ポイよ。いくらなんでも昨日着いたばっかしでよ、
ナオンできるわけねえだろ」 

っはっは、そりゃそうだ。ユキオ、にさんち待ってろよ。

なあミミ。

「たぶんな。 マブイのがいれば、きょう」

うっへっ、さーすがっすねミミさん。

「ばか、わかんねえよ」

「じゃ1時にゃ出ようぜ。きょうは白の上着とラッパそれと
メニューも忘れんなよ。 せっかく昨日苦労して作ったかんな」

シータク130円。15分でセーミに着いた。


In A Gadda Da Vida honey !

「なんだ、誰も居ねえのにバカでけえ音でかけてんじゃん」

こっちにイーボいますよ。 音下げますか?

「いや 俺今そっち行く」 

ああ、どうも。 今日から入るバンドです。お世話んなります。
ちょっと音下げてもらっていいっすか。 練習やるんで。

「ああ、バンドの練習? タイバンには言ってあんですか?」 

え? タイバンには言ってねえよ。
バランスみるだけだ。セッティングは昨日やってあるし。

「いいけど、ニューオリンズ毎日4時入りで練習演ってっから。
じゃあ一応4時までね。」

おお、わかった。

「俺もたまに弾かしてもらってんだ。
秀ちゃんにギター教えてもらってさ。 俺も京浜プロに言われて
川崎から来てんだ。まだぜんぜんだけどさ。よろしく」

「お、言葉通じんじゃん。 よかった」

じゃあ、時間調整しなきゃな。

「うん、一応話してからのほうがいいっすね。
秀ちゃん達めちゃくちゃ練習してますよ。
今月で上がってデビュー目指すんだってさ」

「へえ、ほんとかよ、しゃかりきだな。
じゃ俺等もやっか。レコードでも作ってよ」

「ユキオが一人前なんの何十年後よ」

「ひっひ、ちゃんとやりますよ俺だって」


対バンがこっちで俺等こっち側かな。

タイコもっと寄せたほうがいいな。

「お、ツーセットってことはワンバンはスネア取替でチェンジ
だろな。 俺のタイコ使うのか。 めんどくせえな。
イスも取っ替えたらバイヤじゃん。」

こばちゃん、しょうがねえよ。
あとでタイバンのタイコ来たら話してみろよ。
うまくやってかねえとな。 俺等一応ゲストだしよ。」

じゃあ、とりあえずバランスみるからシャッフルで何か演ろうぜ。 
俺ステージ降りて聴いてみる。でかい音だせよ。じゃ演やろう。


じゃマッチボックスな。1,2,1,2せーの~
i said im sittin here watchin machbox hole in my♪

よぉ!ちょっとストップ!
ステージさぁ、奥行き結構あるしタイコ弱いな。
スーベももうちょいだして、ヤノピのスピーカーもうちょっい
内側向けて、ステージじゃ聞こねえだろ。

「ボーカルのスピーカーもハウる寸前まで内側向けねえと
聞こえねえよ。前にゃターギの音しか抜けてこねえよ。 
バランスよくねえ。」

リズム隊弱いな。スーベちょい上げて7か8でいいんじゃねえの。

「おお結構いくな。こりゃスネアも全部リムショットだな。
シンバルもミュート無しでOK。 ミュート無しも久しぶりだろ
全開で演れよゼンカイでさ っへっへ 」

ところでさっきの曲、あれ何よ。

「あれな。 かっこいいよな、聞いた事ねえけど」

おいユキオ、イーボに聞いてこいよ。

「へーい」

...何だって? 

「ガダビダだって」

なにい? 何だそりゃ ガタガタ?

お前、知らねえと思ってなめられてんだ、ばか。俺が聞いてくる。

・・・どうよ わかった?

「ああやっぱ題名はIn A Gadda Da Vidaだ。知らねえけど、
アイアンバタフライってバンドのだって。
すげえ長え曲で5分以上あるぜ。
ここの兵隊にバカ受けで、ニューオリンズも今仕上げてるって」

ほぉぉ!じゃあ俺等もやろうぜ。レコード借りてってさ。

「おお、どうせさリクエスト絶対来んだろうし、プーチ狙いだな」

じゃ早く仕上げようぜ。 ところでチェンジ曲聞いたか。

「ああ グリーンオニオンだって」 

よし練習やんぞ。


そんで4時過ぎ、ニューオリンズが入って来た。

「よおお!やっぱな。イズミ元気かよ。ミミ、こばちゃんどうよ」

おおお!マーちゃん 久しぶりじゃん。秀ちゃんも元気!?

「いやいやほんと、来てたんだぁ。 どうよみんな元気かよ」

「いやぁ、誰が来んのかって思ってたら、今朝ユキオとかいうのが
部屋来てさ、聞いたらビックリよ」

「今度入ったボーカルの大森とタイコ変わったんだ、良ちゃん」

よろしくたのんます。っへっへ

パーマは大森さんだったんだ。


「ひっひっミミ 髪の毛のびたじゃん。こばちゃんものびたな」

へへ、結構ロックっぽい?

「うんゴキゲンじゃん。 イズミ太ったな」

先月一か月遊んだかんな。

「よっし、パイイチやろうぜ」

はいはい。 買って来ましたよマミツも。

「さすがユキオ。わかってんじゃんよ」

うちもヤノピのこいつ入れて4人で来たのよ。
まだボーヤだけどよろしくな。

じゃあカンパーイ!おうカンパーイ!


もう白のジャケットなんか着てる場合じゃなかった。

ワンステージでツンパまで汗びっしょり。

セーミはほとんど米兵。いつも満員。踊る踊るバカ騒ぎ。
ドルのプーチは来るし、ナオンも最高。

初日に楽屋に差し入れ娘も来た。

こりゃ、面白くなってきたぜ。


果たして広島がgarden of Edenとなるか...。
 
むっひっひ あっはっは うっしっし
< 7 / 11 >

この作品をシェア

pagetop