士農工商犬猫ドンバ

米兵乱闘 / 広島姐さん

1週間ほど経ち、ステージもクーキャもナオンにも慣れた。

白のジャケットはTシャツに、ボンズはジーパンに変わった。

米兵からはプーチが入り、ネカには不自由しねえ。

寮には帰らず、ナオンのアパートにしけ込み、自分のは一銭も
使わず、小遣い貰って。 ゴキゲンだぜ。

そんなある日のステージだった。


おいイズミ、あそこ!やってんぞお。

おお分かってる、音切んなよ! 

ああーやったあ、ぶっ飛ばした。 やべえぞ。
 
おーいよけろ! あぶねえ。 

ボンッ!! ヴァァシャーン!! 


なんなあ! なにしとん!ええかげんにせんか! 

OO!!! FU○○ U! man! damn @$**

おい、こっちもだ。 やってんぞ気をつけろ。

ぐわあ! あっイズミ やばいぞ。

だいじょぶだ。チェンジだ。

スーベとタイコだけでいいから音切んな。

わかった、ユキオ! イーボ呼んで来い。
 
早く! モップかけろ。

へぇーい。 うわーあすげえよ、最悪じゃん。


  ええかげんにせんかい!
 

・・・止まった。

あ~しかしまいったな。 ひでえよこりゃ。

ちょうどバスドラのストッパーに当たったぞ、命中だ。

「あーステージがルービ臭えよ。まったくどうなってんだ」

「イズミ、見てたじゃん。どしたのよ、どうなったんだ」

おお、最初な、前の左側で4人で飲んでた奴等んとこに、
急に奥から一人来て、スキンヘッドの奴をぶっ飛ばしたのよ。

おお、あのでかい奴な。
 
そんで乱闘でルービ投げた。 そしたら奴に当たらねえで、
ステージに飛んで来たってわけ。

迫力満点だったな、っへっへっへ。

しかし巨人優勝じゃあねえっつうの、っひっひ。

ふたりくらい血流してたな。
 
おお、でもよ、ママのひと声でパツイチで止まったな。
 
ああ、奴等出入り禁止くったら、ほかに行くとこねえしな。 
なんたってママは一番怖ええのよ。上等兵よりな。ひっひ

「イズミさあ、前もこんなことあったんすか?」

いや、去年は米兵ばっかりじゃねえし、地元の若いのが
騒ぐ程度だった。でも今年はベトナム帰り多いじゃん。

おお、そうかあ。 奴等、ちょっと違うしな。血の気が多い。
 
「瓶じゃなくてよかったわ。瓶だったら今頃俺等病院すよ」

瓶はカイタだから、奴等いつもスイヤの缶ビール専門よ。

 

ま、とりあえず着替えようぜ。

こばちゃんさ、バスドラにマジックで丸描いといたら?
ビールの絵でも描いて、ここですよって。 ひっひっ

ばっかやろ冗談じゃねえよ。タイコもシンバルもベタベタだ。

ユキオ、タオル目一杯借りてこい。 チェンジ早めに乗れよ、
全員の楽器拭くの手伝えよ。 あー参った参った。

「へいわかりました。俺も腱盤ベタベタだしヤバイっすよ」

「しかしよぉ、ザキより迫力あんじゃん。 ジョンなんかも、
こんなステージやってたんだろうな」

そうそう、便所の蓋かぶって演ってる写真あったじゃん。

おお、じゃあ俺等も将来はビッグか?

っひっひ、んなわきゃねえな。 っへへ


<次の日の楽屋 ノックの音・・excusexx・・>

「お なんだ?お~いこばちゃん、英語だエーゴ、アメ公だ」

どしたのよ

「知らねえよ。何か言ってんぞラリってるかもな、ツラ青いぜ」

まかしとけ。 What’s wrong man this is not your ・・・

「aahh//&%%」

ああ? なんだよおめえよ、分かるわけねえだろ。

「??watasi・・ゴメナサイ・・this aa・・」

なんだあ? 煙草出したぞ、イズミよ。ウインストンとセーラム。

おお、思い出した。 昨日暴れた野郎だ。 もらっとけよ。
 
おお、じゃありがとさん。

「OKOK mucho・・」


「なぁんだよ、こばちゃん。エーゴできるんじゃねえのかよ」

違うんだよ。 奴はエーゴじゃねえ、スパ系だ。たぶん。

「ばぁか、あいつ等ベトナム行ってるアメ公だぞ」

へっへ、そりゃミミ、甘ええな。
アメ公が全部英語だと思ったら大間違いよ。

「ええ?そうかよ。 お前分かんなかっただけじゃねえの」

ありゃスパニッシュ系だ。奴、昨日の件で謝りにきたんだろ。 
みやげのタンメ持ってさ。

英語喋べれねえわきゃねえけど、どうせ俺等に英語通じねえと
思ったか、相当ママにしぼられて謝りに行って来いって。
そんでマジんなって母国語が出たか、どっちかだ。
 
あんまり見ねえ顔だけど、ガタイいいしな。
初年兵でベトナムで最前線やらされたんじゃねえの。
ドンパチさ、そんでテンパッちゃってんだ。可哀そうによ。


「こばちゃんさ、スペイン語はだめなんすか」

あたりめえだ、分かるわけねえ。フラ公はちょっと知ってる。
ケツ臭えとかケツ貸せとかよ、ヒッヒ。

「ぶわほっ、けっけっけぇつっくせえ~?!なんすかそれ」

だからよ、フラ公のパツキンのすっげえマブイナオンがさ、 
ケツ臭えって言うのよ。 バイヤだろ。 っひやっひやっ

「けっつくせええ?な~んだそれ い~ひっひっ!」


<10日後、 最初の休みが来た。
イズミと俺のナオンは二人で一緒に住んでる。
俺等は、きのうもそこにしけ込んで、寝起きのプクイチ。

そしたら、電話が鳴った。 ○コが受話器をふさぎながら
口に人差し指を当てて、俺等の顔を睨んだ。 
俺等はテレビを消して黙った>


もしもし、ああパパ? なんな?・・んなら・・わかった。
 
「タカ○!イズミとヨツチャンの靴、下駄箱に隠したり。
灰皿洗って、早ような! パパ来るんよ。
あっこのサテンやけん、10分で来よる」 

「ええ?どしたん?パパ来るて きょうはなんな?」

「急に5人いれるからって言っとった。検品や。早よしてや」
 
「あんたら、これが来よるけ押入れ入り。出たらいけんよ。  
すぐ帰すけんな。 ふとんかぶって音出したらいけんよ」

おいおい、なんなんだよ。 やだよドンパチは。

「だ~いじょぶけん。 心配せんで早よ入り」
 
おいイズミ、こりゃバイヤだ。 パパってこれもんだろ。
 
おおバイヤだな。 レーバしたら殺されるぞ、俺等。
 
おぉやべーな。 ○コ 早く帰せよ、頼むぜ。 
しょうがねえ入るか。 バイヤバイヤ・・・。


 <ピンポ~ン> 来た・・・

シーツ、動くな音出すなよ。 しかし押入れ暑いな。

「どや・・・やっとんか」

「ぼちぼちや、心配いらんよ。 茶入れるけん」

「ええよ、下で若い衆待たしとる」

おっおい、こりゃモノホンだぞ... 

イズミと俺、目を見て動けねえ。 歯をくしばる。
咳も屁も我慢。顎まで汗が垂れる。

奴等、やけにネカ回りがいいと思ってたが、
バックにモノホンのスジモンかよ・・・なるほどな 
見つかったら殺られんな・・・
 
・・・イズミ、これ押入れ、観音開きじゃねえか。

中から押さえてなきゃ開いちゃうじゃねえか。

手がしびれてきた...10分だ、まだか。
 
足もしびれてきた、まだか...20分顔もしびれてきた。

ちっきしょう・・タバコ吸ってやがる・・吸いてえ。

頭痒い、ツーケ痛え・・喉乾いた・・もう30分たったぞ。
 
腹痛くなってきた。頼む帰ってくれ限界だ。 くっそう。


(・・・・そやけんのぉ 頼むのぅ・・・)

おっ 帰るな


≪バターン コトコト・・・・カチャ≫

よっしゃ、帰った。

出るぞ。 ぷはあぁ! たまんねえ、死にそうだったぞ。

指曲がんねえ。 タイコ叩けねえぞ。

おお、俺もやばい、吐きそうだ。 水くれ水。

一服してえ、おいタバコくれ。

「うへ、 はいご苦労さんでした。 去んたよぉ」

おお暑ちい。 早く水くれ。 タオルもくれ。
 

そんでパパだいじょぶかよ? 

「心配いらんて。あと10分くらいで女の子5人来よるけん、 
あんたらに見しちゃろか? おっほっほ」

何? まだ来んのかよ。なんなんだ。おめえ等なにやってんだ。

「心配せんでもええよ。 パパはもう来んよ」

「○コ!見せんほうがいいよ。男が居ったらできへんよ」

「それもそやね。 あんたら、もっかい押入れやね。ふふ」
 
「今度はちょっとかかるけん、水とタオル持って入りんしゃい。
布団敷いて座れるようにしたらいいけん。ちょっとくらいの音
こっちが開けんきゃだいじょぶや」

ばか野郎、 じょうーだんじゃねえぞ。 イズミ帰ろうぜ。
 
おお帰ろ。まったく、こいつらわけわかんねえ。 


<ピンポ~ン  ピンポ~ン>


「は~ぃ、ちょい待ったいよぉ、今片づけるけんね」

うっ、もう来たぞ。 来たじゃねえかこのやろう、やばいぞ。

「早うタオルと水持ってイズミと入り。 早うせんねぇ」
 
うええ、またかよ。 タバコ吸いてえ。


「姐さん、ごぶさたです・・連れてきたけん」

...こいつら...一体なんなんだ。

  
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