風の放浪者

 ご苦労様。

 聖職者の面子を潰されたということで、相手を捕まえようと必死になる。

 ふと、面子とは何かと思ってしまう。彼等の面子とは――大勢の信者から、崇め奉られることなのだろうか。

 崇められるのは、人間ではなく精霊。

 それがいつの間にか逆転してしまい、自分達が偉い存在と勘違いしている。

 所詮、彼等にとって〈精霊信仰〉とは、一種の建前のようなもの。

「馬鹿馬鹿しいね」

「何?」

 ユーリッドが発した言葉に、異端審問官は過敏に反応を見せる。

 今までそのようなことを言われた経験がないらしく、感情を素直に表に表す。

 冷静さに欠けている者達に、ユーリッドは肩を震わせ笑う。

「何がおかしい」

「貴方達の行動が。聖職者とは思えない。感情のままに動く。そして、自分達に都合が悪い存在は捕まえる。その後に待っているのは、拷問でしょうか? 異端者には権利は無いと……」

「適切な行動だと思うが」

「そうでしょうかね」

 開き直りの言葉に、ユーリッド呆れてしまう。

 いつから聖職者は、このようになってしまったのか――そう考えても、結論は見出せない。

 そして、自分の側にレスタがいないことが幸いか。

 もし彼が側にいたら何が起こっていたか想像が付き、聖職者全員が殺害される。

「そこの修道女、迎えに来た」

 精力者の言葉にエリザは頭を振り、それを激しく拒む。

 今まで仲間と思っていた相手であっても、今のエリザにとっては敵そのもの。

 それに素直に従い帰ってもどのような結末が待っているかわかっていたので、ユーリッドと一緒にいることを選び彼等の言葉を否定する。

「毒されたか」

「違います! これは、私の意志です。それに、皆様の考えが間違いということを知りました」

「やはり、毒されたか」

「本当に違います!」

 自分の意思を受け入れてくれるほど、彼等の考えは甘くはない。

 二人の異端審問官がエリザの前に行くと、簡単に気絶さえてしまう。

 その行動にエリックが指を指し抗議をするが、相手は聞く耳を持たない。

 それどころか教えに反した者に優しくする理由がないと、言い切る。
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