風の放浪者

『……殺害します』

「もう少し、辛抱してくれ」

『我慢の限界も近いです』

「あの性格が、彼の特徴だ。それより……」

『申し訳ありません。あの話は、特に――』

「いいさ。真実だ」

『マスター、我等の憎しみは変わりません』

 彼女の口調は、荒々しいものであった。

 対象物に対して相当の嫌悪感を抱いているのか、言葉の隅々に刺が含まれている。

 そんなフリムカーシを諌めるように頭を振ると、調べてきたことを詳しく話すように促す。

 一瞬フリムカーシは言葉を詰まらせてしまうがそれに素直に従い、この街であった出来事を話していく。

 それは人間の欲望と執着心が作り出した悲しい物語で、業を浮き彫りにしていった。
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