風の放浪者

 ユーリッドが語っていく内容は、人間がどのように生きていくべきか問うものであった。

 そして、真実の探求の難しさを教える。彼は切のいい部分まで話し終えると、エリックの顔を凝視する。

 エリックは珍しく、厳しい表情を浮かべていた。彼もまた探求者であり、過去に起こった事実を明るみにする身分であるからだ。

 だからこそ、ユーリッドが語る内容に嘆き悲しむ。

 これが、人間が行った内容なのか。

 それも、聖職者が――

「彼等の意思を継ぐ為に、許しを請うしかない。人にできるのは、それだけだろう。しかし、一番難しい」

「許してくれるのかな?」

「君にしては、弱気だね。でも、弱気になる気持ちはわかるよ。何故なら、相手は……御心は計り知れない」

 ユーリッドは、沈黙を続ける。言葉に表さなくとも、エリックが示す人物を簡単に特定できた。

 いや物事の本質と神話の真実を知っている者なら、その人物の名前を発することができるだろう。

 しかしその人物の名前を言葉に出すのは恐れ多いことで、おいそれと口にできない。

 沈黙が続く中、フリムカーシは何も告げずに姿を消す。

 それは勝手とも取れる行動であったが、ユーリッドは特に咎めようとはしない。

 一通りの話を終えたら、自分も帰宅しようと考えていたからだ。

 そしてエリックにそのことを告げるが、まだ残っていてほしいのか懸命に引き止める。

「どうしてだ?」

「体調が優れないもので……戻って休もうと思っています。休めばすぐに良くなると思います」

「それはいけない。気付かなくて、悪かった。可愛いユー君が倒れてしまったら、困ってしまう」

「それは、どうも……」

「そうだ、明日例の場所に行こうと思っている。君も来るかね? 個人的には、来てほしい」

「そのように、訴え掛けてこなくていいです。僕は、行きますから。それに続きは、其処で話しましょう。短時間で終了するほど、簡単な内容ではないですから。それと、その動きは止めて下さい」

 ユーリッドと別れるのが寂しいのか、エリックは身体をクネクネと動かしている。

 その艶かしく怪しい腰の動きに吐き気を覚えたユーリッドは、逃げるように部屋から飛び出ると、階段を駆け下り建物の外へ向かう。

 その途中、姿を消したフリムカーシの声が頭に響いた。
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