風の放浪者
「あれー、質問はひとつじゃないのかな?」
顎に人差し指を当て、首を傾げる。
しかしユーリッドは、特に驚く素振りを見せる。
どうやらエリックに対して耐性が付いてしまったらしく、ユーリッドは間髪を容れずに突っ込みを入れた。
そして、冷ややかな視線を向けると彼に向かって思いっきり毒を吐き続けた。
「うわ! 酷いな」
エリックは前髪を掻き揚げると、フッと溜息を付く。
そして何を思ったのか腰に両手を当てると、胸を張って質問に答えていく。
その何とも堂々とした態度にユーリッドは苛立ちを覚えるが、懸命に怒りを抑える。
「ユー君との出会いは偶然さ。付き纏いは、必然と思っていい。君が感じ取ったように、同じ匂いを感じた。学者という生き物は、他の者達と違う一面を発するものだからね。物事を多方面から見詰めている、それが関係しているのだろう。だから君と一緒にいようと思った」
同じ匂いがする同士、言葉がなくとも通じ合う。
ユーリッドは大きく頷くと、エリックの言葉を信じることにした。
それに彼の言葉に偽りは感じられず、どうやら道化を演ずることをやめたようだ。
「なら、早く捜しましょう」
「信じてくれるのか?」
「信じるも信じないも、遺体をそのままにはしておけません。やはり、きちんと埋葬しませんと」
志半ばで死んでいった者達。
彼等に敬意を示すと同時に、ユーリッドは魂の開放を願う。
生前、祖父は自分の仲間を心配していた。大勢を残し一人だけ逃げたということが、罪悪感となり心を縛り付けていた。
このことは、祖父を苦しみから解放にも繋がる。
別に、エリックに言われたら行うということではない。
先にユーリッドがこのことに気付いていれば同じことをしており、要は順番である。
「伏せて!」
刹那、ユーリッドはエリックの服を掴むと引っ張り頭を下げるように命令をした。
一体何が起こったのか理解できないエリックであったが、渋々ながらそれに素直に従い身を屈めた。
「な、何?」
「声を小さくして下さい」
生い茂る草の隙間から、微かに見える複数の人の姿。
互いに距離があるので正確な格好はまではわからないが、あの服装には見覚えがある。
赤を基調とした修道服――聖職者の中でも異質な存在である、異端審問官。
その姿にエリックは舌を鳴らすと、徐に顔を歪めた。