天使のアリア––翼の記憶––
「先に更衣スペース借りました。」

私は特に髪をセットしたり、なんて面倒なことはないので毎度のことながら早く終わった。いや、早く終わらせないと、確実に小言をつかれる。怒られる。


「月子…」

「なんでしょう?」

え、どこか可笑しい?変?

パパッと身だしなみを確認するけれど、可笑しいところなんてどこにもない。


「また、その黒いドレスか?」

「え、あ、まぁ…」


伴奏は主役より目立つわけにはいかない。平凡な私よりもスーパークールビューティーな先輩の方を見てほしいしね。

それに、このドレス気に入っているんだよね。飾りがあるわけじゃないけれどすごくスタイルが良く見えるの。それにピアノも弾きやすいという高機能だけどデザイン性もあるという素晴らしいドレス。

私的には結構いいと思うんだけどな…?


「いい加減色のついたドレスを着ればいいのに。」


更衣スペースのカーテンの向こうから聞こえる先輩の声。どうやらお着替えをしているらしい。


「そういうわけにもいきませんよ。私はただの伴奏者ですから。」

そう言って笑うと、複雑そうな顔をされた。うーん、どうして?


「なんだかあたしばかり目立って嫌だ。」


…なんですか、その可愛さ。

ちょっぴり拗ねているところが尚更可愛い。可愛すぎる、可愛すぎます先輩!


「コンサート会場では先輩が主役だから目立つのは当たり前です!それに先輩のことなのでどんな格好をしていても目立つことは避けられませんよ」


だって、先輩が可愛すぎて、綺麗すぎて、かっこよすぎるんだもの。麗しいという単語が人の形を取ったらこうなるんだろうな、というように。

容姿端麗で、学業優秀、運動神経抜群で、全校生徒の憧れ。
 
そんな先輩が目立たないわけがない。
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