その蜜は海のように
三ヶ月はあっという間だ。

リィアの部屋は、主発式と視察団入団式、視察団対面式の準備に覆われ侍女で溢れかえっていた。


「はあ、なんで式がこんなにあるのよ。
ひとつで十分だわ。」

その日の分の準備が終わった夜、リィアはアーヤの淹れたお茶を飲んでいた。

「仕方ありませんわ。国事ですし。」

そう言うアーヤも疲れた顔だ。
今日一番頑張ったのは彼女だ。侍女頭として準備の監督を務め屋敷すべての部屋を走り回っていた。

「アーヤ、毎日ありがとう。一番大変なのは貴女でしょう?」

「と、とんでもない。これでも私楽しんでますのよ。この国から出ることなんてもう一生ないかもしれないですし。」

侍女の職に就く者は裕福で教養があるが、主人に暇を出されない限り実家には葬式以外は余程の事がないと帰れず、旅行なんて皆無に近い。

「そうね。なによりもまず、楽しみましょう。堅くなっても仕方ないしね。」




そして、式の日をむかえた。




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