その蜜は海のように

クラマバークの国では、かなり久し振りの視察行きに向けた三つの視察団式が注目を浴びていた。

クラマバーク帝国の領主達のみで構成された視察団に新しい領主が加わることがまずないため、対面式と入団式が久し振りなだけではなく、女性が職に就くのが珍しいクラマバークで女領主、しかもとびきりの銀髪碧眼美少女が領主の一人として入団することが民衆の関心事だった。


視察団対面式は午前、入団式は午後に別れ、次の日を一日丸ごと使い主発式が行われる予定だった。


クラマバークで祝福を意味する青の空に包まれた空気の中、屋敷の中に少女の呻き声が響く。

「ああ、どうしても正装でなきゃだめかしら?身体に張り付いて嫌だわ。」

リィアは早朝から不機嫌だ。

「当たり前でしょう。ほら、後はマントだけですわ。」

そのマントが一番分厚くて重いのにとリィアは思いながらもしぶしぶアーヤに着替えさせてもらっていた。

「それに見てください、この空。リィア様はとても運が良いですわ。」

たしかに、一年のほとんどが曇りか雨の悪天で有名な国には珍しいほどの晴天だ。

「皮肉だわ。私はこんなに悩んでいるのに。」

そんなリィアの気持ちなど吹き飛んでいきそうなほど青いのもまた皮肉だった。

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