小咄
「き、君はどういうつもりなんだっ」

 目の前の真砂に、鋭い目を向ける。
 自分の部屋の前で、ちらりと真砂が六郎を見た。

 六郎のように動揺している風もない、いつも通りの無表情。
 深成が来るのを待っている、と思うと、この涼しい顔にも腹が立つ。

「どういうつもりも何も。俺は何も言ってない。あいつが一緒に寝る、と言うんだ」

「そうだとしてもだな! 普通に考えれば、おかしいだろう! み、深成ちゃんは女の子だぞ」

「何がおかしい。女だから普通なんだろうが。俺は男には興味はない」

「そういうことではない! 君は深成ちゃんを、どう思ってるんだ! 狙っているから、ここぞとばかりに深成ちゃんを自分の部屋に引き入れるんだろう!」

「何度も言わすな。俺がどうこうしたわけじゃない。あいつが、俺のところに来たい、と言ってるんだろ。お前のところじゃなくてな」

 何気に強調された後半部分に、がぁん、と六郎が仰け反る。
 悔しいが、その通りだ。

「何やってるの。お待たせ、真砂。ねね、この子も一緒に寝ていい?」

 二人の男の張り詰めた空気も読まず、深成が部屋から出てきつつ、くまのぬいぐるみを真砂に突き出した。
 片手には、うさぎのぬいぐるみを抱いている。

「お前なぁ。一つでいいだろ、そんなもん」

 嫌そうに言う真砂に、深成はぶんぶんと首を振る。

「だって! このくまさん置いてたら、六郎兄ちゃん狭いだろうし。だからといって、ベッドから落としちゃうのも可哀想だもんっ」

「俺のところに持ってきても、蹴り落とすぜ」

「駄目っ! それはわらわが守るもんっ」

 きゃんきゃんと言いつつ、ドアを開けた真砂に続いて部屋に入ろうとする深成の腕を、六郎が掴んだ。

「だ、駄目だよっ! その人と二人で寝るなんてこと、許せるわけないだろう」

「え~、何で? だって他に手段はないじゃん。六郎兄ちゃん、病気なんだよ?」

「で、でもっ」

 断固として腕を離さない六郎に、深成が困った顔をする。

「寂しかったら、ほら、わらわのぬいぐるみ、何でも抱っこしていいからさ」

「そうじゃなくてね……。前も言っただろ? 深成ちゃんは女の子なんだから、そこのところを、もっと自覚しなさい」

「六郎兄ちゃん、心配し過ぎだよぅ。大丈夫。わらわだって、嫌いな人に引っ付いたりしないから」

 さらっと言われたことに、六郎は思わず手を離した。
 当たり前といえば当たり前のことなのだが、六郎の頭では、さらに深いところまで考えが行ってしまう。

---ということは、やはり深成ちゃんは、奴のことが好きなのか!!---
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