小咄
「合コン? はぁ、あれは合コンだったのか。ほおぉ、まぁ合コンというよりは、それをダシに、捨吉を落とそうという肚だったんだろうが」

 清五郎までがにやにやと、話に乗ってくる。
 捨吉はだらだらと汗を流しながら、しきりに頭を掻いている。
 あきは、ちらりと千代に目をやった。

---千代姐さんのほうは、どうだったのかしら。捨吉くんより、こっちのほうが気になるんだけど---

 あのとき、偶然居酒屋で、千代に会ったのだ。
 そのとき千代は、清五郎と二人だった。

 千代は真砂にベタ惚れだが、清五郎だってそれなりの男だし、何より嫌っていたら二人で食事になど行かないだろう。
 あの後この二人は、何事もなく帰路についたのか、こっちのほうが知りたいところだ。

 が、これはこの場では下手に聞けない。
 真砂がいる前で、千代が清五郎とデートしていたなどと暴露したら、真砂は何とも思わないだろうが、千代が恐ろしい。

 案の定、千代があきを、ちらりと見た。
 余計なことは言うなよ、という目だ。

---ま、この様子じゃ、何もなかったんでしょうね。清五郎課長も、無理強いするような人じゃないし。ていうか、それ以前にどこまで本気かわかんない人だし---

 そう結論付け、あきは千代への追及はしないでおこうと決めたのだが、捨吉が話題を振った。

「そ、そうだ。あのとき、そういや千代姐さん、清五郎課長と一緒にお店にいたよね?」

 捨吉としては、話題を変えたかっただけだろうが、場が悪いことこの上ない。
 ぴき、と千代とあきが固まった。
 そこに、深成も無邪気に相槌を入れる。

「へー。千代、清五郎課長とも仲良しなんだねぇ」

 あきは心の中で頭を抱えた。
 横を向くのが恐ろしい。

 が、清五郎が何てことのないように口を開いた。

「ああ、そうそう。俺はたまたま、あそこの社長のところに行く用事があったしな」

「お前はちょいちょい、顔出してるんだったな。社長は元気か? 相変わらずっぽいが」

「変わらんぜ。お前にもよろしく言ってた」

 横で固まっている二人など気にも留めず、清五郎と真砂は話し続ける。
 千代と清五郎の関係など、真砂は本当にどうでもいいようだ。

 ちらりとあきは、横の千代を盗み見た。
 ほっとしたような、でも若干がっかりしたような顔で、真砂を見つめている。

---ま、千代姐さんとしては、真砂課長がちょっとでも反応してくれたら嬉しかったでしょうね---

 だが残念ながら、すでに真砂の頭には、初めに出てきた清五郎と千代が一緒にいた、という情報はないようだ。

「あきちゃん~。あきちゃんは? あんちゃんと合コン行ってたよね? お友達出来た?」

 不意に深成が、あきに声をかけた。
 あきが前に目を向けると、真砂の横に、ちまっと座った深成が、ビールのジョッキを抱えている。

 ジョッキといっても、コップには変わりない。
 なのに深成が持つと、やたらでかく感じる。

 両手でジョッキを包み込むように持っている姿は、小さなお座敷犬のよう。
 まさに『ちまっ』という表現が似合う。
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