小咄
「おいおい真砂。可愛い部下の、可愛い接待じゃないか。乗ってやれよ」
清五郎が手を伸ばして、よしよしと深成の頭を撫でる。
「馬鹿か。単なる酔っ払いの絡みだろ。ほら、お前こそ食わないと、酔いも醒めないぞ」
しかめっ面のまま唐揚げを取ると、真砂は少し冷ましてから、深成の口に押し込んだ。
それにまた、六郎とあきが目を剥く。
---あ、『あ~ん』で食わせた……!!---
火傷した唇の痛さも忘れ、六郎は動きを止めて真砂を凝視した。
決して『あ~ん』などという言葉は発していないのだが。
---初めは泣かせたくせに、な、何なのだ、この男はっ!---
その泣かされた深成は、食べさせて貰ったことで、すっかり機嫌は直っている。
もぐもぐと真砂の横で、ハムスターのようにほっぺたを膨らませつつ、懲りずに千代にも唐揚げを差し出していた。
ちなみに千代は、十分冷ましてから、ぱくりと深成の箸から唐揚げを食べてくれた。
「深成。いいからあんたも食べなよ。課長の仰る通り、しっかり食べないと気持ち悪くなるかもだよ」
千代に言われ、深成はこくりと頷く。
そして嬉しそうに、がっさ~っとサラダを取ると、うさぎのようにもしゃもしゃと食べ始めた。
「え~、深成~。俺にはぁ?」
ずいぃっと捨吉が顔を突き出す。
ん、と顔を上げ、深成はきょろ、と机の上を見た。
が、捨吉も大して食べさせて貰うことに拘りはないようで、すぐに身体を戻す。
そしてドリンクメニューを手に取った。
「さ~深成。課長も来たし、もう安心だろ~? 何飲む?」
にこにこと、深成にメニューを差し出す。
「ん? 何だ、派遣ちゃんは真砂がいないと飲まないのか?」
清五郎が、ちょっと面白そうに口を挟む。
深成が、無邪気にこっくりと頷いた。
「だって課長、わらわが寝ちゃっても、負ぶってくれるもん」
「ああ、そういえば。そういや真砂がそこまでするのって珍しいよな」
狙っているのかいないのか、清五郎が突っ込む。
六郎は唖然とした。
そういえば、ということは、過去実際にそういうことがあったということだ。
「こいつは小さいから軽いしな」
真砂が深成とサラダを取り合いしつつ、しれっと言う。
「もぅ、またわらわのこと、小さい小さいって言うし。わらわ、子供じゃないっての」
ぶつぶつ言いながら、忙しく箸を動かす。
あきは相変わらず目尻を下げて、にまにまと前に座る二人を見た。
---ちょっとやっぱり、前と雰囲気が違う? 何だかんだで真砂課長の優しさが目につくのは気のせいかしら? さっきの唐揚げだって、さりげなく冷ましてあげてたし。ていうかそれ以前に! あの真砂課長が深成ちゃんに『あ~ん』って! ああああ、良いものが見られたわぁ~~。サラダだって二人で仲良く食べてさっ---
そして、ちらりと視線をおのれの真横に移す。
千代が清五郎に刺身を取り分けていた。
---おお、千代姐さんは清五郎課長にかかりきり……。ていうか、真砂課長はこういうことして貰うのも好きじゃないだろうし、出来ないんだよね。深成ちゃんぐらいよね、課長に取り分け出来るの---
とはいえ、深成は真砂に取り分けているわけではない。
いっぱい取って、それを二人で食べているだけだ。
そしてその様子を、六郎が青い顔で見つめている。
「六郎さん、どうしたの~? あ、お酒もうない? 追加しましょう」
いそいそとドリンクメニューを見る捨吉は、六郎の意見を聞くこともなく、ハイボールをオーダーする。
そして運ばれてきたジョッキのハイボールを、六郎と清五郎に渡した。
「清五郎課長。どうです、六郎さん」
自分もハイボールを飲みつつ、捨吉が言う。
清五郎は、ちらりと六郎を見た。
「う~ん、俺はそんなにまだ絡んでないしなぁ。でも特にどこからもこれといった話も出ないってことは、まぁそつなくこなせてるんじゃないか?」
「六郎さんはぁ? どう、お仕事は」
にこにこと聞いているが、多分全然興味はない。
その証拠に、話を振ったものの、捨吉は前の深成にハイボールを勧めたりして聞いていない。
「おい捨吉。そんなもん飲ますな」
「ええ、だって深成もそれなりに飲めるようにならないと、課長がいっつもついてないといけないじゃないですかぁ」
「端から俺に任すこと前提にするな。こらっ! お前も素直に飲むんじゃない!」
真砂が捨吉と話している隙に、深成が捨吉のジョッキに口をつけ、それを慌てて真砂が止める。
しかしすでに遅く、ごくりと深成の喉が鳴った。
「……何これ~。変な味~~」
思いっきり顔をしかめて、深成が舌を出す。
さっと真砂が、ジョッキを取り上げた。
「ほら。どうせ飲めないんだから、お前はジュースで十分だ」
「ずるーい。自分は何でも飲めるくせにさ~」
ぶーぶーと頬を膨らます深成を無視し、手に持ったジョッキを捨吉に戻す。
その様子を、六郎は意外そうに見つめた。
「六郎さん? どうかしました?」
先程からずーーっと六郎を観察していたあきが、目尻を下げたまま、少し身を乗り出した。
それに我に返ったように、六郎が小さく首を振る。
「あ、い、いや。何か、ちょっと意外だなって。案外真砂課長も、面倒見がいいんですね」
「そうかぁ? 真砂がここまで面倒見るのは、派遣ちゃんだけだぜ、きっと」
ずばんと清五郎が言う。
おお、とあきの視線は清五郎のほうへ。
清五郎が手を伸ばして、よしよしと深成の頭を撫でる。
「馬鹿か。単なる酔っ払いの絡みだろ。ほら、お前こそ食わないと、酔いも醒めないぞ」
しかめっ面のまま唐揚げを取ると、真砂は少し冷ましてから、深成の口に押し込んだ。
それにまた、六郎とあきが目を剥く。
---あ、『あ~ん』で食わせた……!!---
火傷した唇の痛さも忘れ、六郎は動きを止めて真砂を凝視した。
決して『あ~ん』などという言葉は発していないのだが。
---初めは泣かせたくせに、な、何なのだ、この男はっ!---
その泣かされた深成は、食べさせて貰ったことで、すっかり機嫌は直っている。
もぐもぐと真砂の横で、ハムスターのようにほっぺたを膨らませつつ、懲りずに千代にも唐揚げを差し出していた。
ちなみに千代は、十分冷ましてから、ぱくりと深成の箸から唐揚げを食べてくれた。
「深成。いいからあんたも食べなよ。課長の仰る通り、しっかり食べないと気持ち悪くなるかもだよ」
千代に言われ、深成はこくりと頷く。
そして嬉しそうに、がっさ~っとサラダを取ると、うさぎのようにもしゃもしゃと食べ始めた。
「え~、深成~。俺にはぁ?」
ずいぃっと捨吉が顔を突き出す。
ん、と顔を上げ、深成はきょろ、と机の上を見た。
が、捨吉も大して食べさせて貰うことに拘りはないようで、すぐに身体を戻す。
そしてドリンクメニューを手に取った。
「さ~深成。課長も来たし、もう安心だろ~? 何飲む?」
にこにこと、深成にメニューを差し出す。
「ん? 何だ、派遣ちゃんは真砂がいないと飲まないのか?」
清五郎が、ちょっと面白そうに口を挟む。
深成が、無邪気にこっくりと頷いた。
「だって課長、わらわが寝ちゃっても、負ぶってくれるもん」
「ああ、そういえば。そういや真砂がそこまでするのって珍しいよな」
狙っているのかいないのか、清五郎が突っ込む。
六郎は唖然とした。
そういえば、ということは、過去実際にそういうことがあったということだ。
「こいつは小さいから軽いしな」
真砂が深成とサラダを取り合いしつつ、しれっと言う。
「もぅ、またわらわのこと、小さい小さいって言うし。わらわ、子供じゃないっての」
ぶつぶつ言いながら、忙しく箸を動かす。
あきは相変わらず目尻を下げて、にまにまと前に座る二人を見た。
---ちょっとやっぱり、前と雰囲気が違う? 何だかんだで真砂課長の優しさが目につくのは気のせいかしら? さっきの唐揚げだって、さりげなく冷ましてあげてたし。ていうかそれ以前に! あの真砂課長が深成ちゃんに『あ~ん』って! ああああ、良いものが見られたわぁ~~。サラダだって二人で仲良く食べてさっ---
そして、ちらりと視線をおのれの真横に移す。
千代が清五郎に刺身を取り分けていた。
---おお、千代姐さんは清五郎課長にかかりきり……。ていうか、真砂課長はこういうことして貰うのも好きじゃないだろうし、出来ないんだよね。深成ちゃんぐらいよね、課長に取り分け出来るの---
とはいえ、深成は真砂に取り分けているわけではない。
いっぱい取って、それを二人で食べているだけだ。
そしてその様子を、六郎が青い顔で見つめている。
「六郎さん、どうしたの~? あ、お酒もうない? 追加しましょう」
いそいそとドリンクメニューを見る捨吉は、六郎の意見を聞くこともなく、ハイボールをオーダーする。
そして運ばれてきたジョッキのハイボールを、六郎と清五郎に渡した。
「清五郎課長。どうです、六郎さん」
自分もハイボールを飲みつつ、捨吉が言う。
清五郎は、ちらりと六郎を見た。
「う~ん、俺はそんなにまだ絡んでないしなぁ。でも特にどこからもこれといった話も出ないってことは、まぁそつなくこなせてるんじゃないか?」
「六郎さんはぁ? どう、お仕事は」
にこにこと聞いているが、多分全然興味はない。
その証拠に、話を振ったものの、捨吉は前の深成にハイボールを勧めたりして聞いていない。
「おい捨吉。そんなもん飲ますな」
「ええ、だって深成もそれなりに飲めるようにならないと、課長がいっつもついてないといけないじゃないですかぁ」
「端から俺に任すこと前提にするな。こらっ! お前も素直に飲むんじゃない!」
真砂が捨吉と話している隙に、深成が捨吉のジョッキに口をつけ、それを慌てて真砂が止める。
しかしすでに遅く、ごくりと深成の喉が鳴った。
「……何これ~。変な味~~」
思いっきり顔をしかめて、深成が舌を出す。
さっと真砂が、ジョッキを取り上げた。
「ほら。どうせ飲めないんだから、お前はジュースで十分だ」
「ずるーい。自分は何でも飲めるくせにさ~」
ぶーぶーと頬を膨らます深成を無視し、手に持ったジョッキを捨吉に戻す。
その様子を、六郎は意外そうに見つめた。
「六郎さん? どうかしました?」
先程からずーーっと六郎を観察していたあきが、目尻を下げたまま、少し身を乗り出した。
それに我に返ったように、六郎が小さく首を振る。
「あ、い、いや。何か、ちょっと意外だなって。案外真砂課長も、面倒見がいいんですね」
「そうかぁ? 真砂がここまで面倒見るのは、派遣ちゃんだけだぜ、きっと」
ずばんと清五郎が言う。
おお、とあきの視線は清五郎のほうへ。