小咄
が、真砂が口を開く前に、捨吉が、だだだっと深成に駆け寄る。
「こら深成~。駄目じゃないか、六郎さんにまで迷惑かけちゃ~。ほら、二次会行くよ」
「おいおい捨吉。無理強いするなよ」
さりげなく会計を済ませた清五郎が、店の表で手招きする。
捨吉は深成の手を引き、ぐいぐいと店の外に連れ出した。
六郎も慌てて後を追う。
「清五郎課長も、わざわざありがとうございました」
挨拶する六郎に、清五郎は軽く頷き、ちら、と手の中の深成の荷物を見た。
「あんたが派遣ちゃんを送って行くのか?」
「ええ。方向も同じですし、女の子一人では危ないですから」
言うが早いか、六郎は通りかかったタクシーを停めた。
「ほら深成ちゃん。送っていくから、乗って」
捨吉に手を引かれてぼんやりしている深成を呼ぶ。
深成は、じ、と六郎を見、またきょろきょろと辺りを見回した。
「かちょー……」
「うんうん、課長は二次会だよ。だから深成も行くよね~?」
手を引きながら言う捨吉に、深成はこっくりと頷く。
だが六郎は、ぐいっと深成の反対側の手を引いた。
元々深成を捕まえていた捨吉はべろべろなので、あっさりと深成は六郎に奪われる。
「駄目だよ。しんどいだろ? 明日も仕事なんだから、これ以上飲まないほうがいいよ」
「でも、かちょー……」
相変わらず、深成はきょろきょろと真砂を探す。
その真砂は、深成を奪われた捨吉に、がっちりと捕まっていた。
千代も少し酔っているのか、しきりに真砂を誘う。
「六郎さん。ちゃんと送り届けてあげてくださいよ」
散々飲んだのに、ほぼ素面のあきが、目尻をぐぐっと下げて六郎に言った。
「ああ、もちろん」
力強く頷く六郎に、あきは心の中で、ぷぷっと笑った。
---生真面目ねぇ。強引に深成ちゃんを送るかと思えば、この様子じゃ絶対手なんか出さないでしょうね。その点は安心だわ。まぁ真砂課長は内心穏やかじゃないでしょうけど。それにしても……---
目尻が下がりっぱなしのあきは、六郎に促されながらも、相変わらずきょろきょろしている深成を見た。
---深成ちゃん、さっきから『かちょー』しか言ってないじゃない。真砂課長と離れた途端、ず~っと課長を呼ぶなんて。今の不安そうな態度ったら! こういう態度が堪んないんでしょうね。真砂課長も、誰もいなかったら即駆けつけたいところじゃないの?---
にやにやしながら、ちらりと背後を振り返る。
真砂は捨吉に引っ張られ、千代にも絡まれ、六郎に物申す暇もないようだ。
が、ちらちらと視線は深成のほうへと投げられている。
---真砂課長からしたら、心配でしょうね~~~っ!!---
その気になれば、捨吉と千代を投げ飛ばしてでも深成を救いそうだ、と思いつつ、あきは、ぽん、と深成の背を叩いた。
「さ、じゃあ深成ちゃんは送って貰いなよ。大丈夫よ、六郎さんは、そんなに酔ってないから」
にこりと笑って言うあきに、深成はきゅ、と唇を噛んだ。
真砂が来てくれないので泣き出しそうなのかと思っていると、清五郎が、不意にぐしゃぐしゃと深成の頭を撫でた。
「そうだなぁ。派遣ちゃんは、帰ったほうがいいかもな。でも」
一旦言葉を切り、清五郎は、六郎に視線を移した。
「ちゃんと送れよ。真砂の大事な子なんだからな」
少し、六郎が怯むほどの視線で言う。
おお、とあきが、目を見開いて清五郎を見た。
「え、ええ。もちろんです」
深く頭を下げると、六郎は深成を後部座席に乗せた。
では、ともう一度軽く頭を下げると、六郎も乗り込み、タクシーは走り去って行った。
「ねぇ清五郎課長。さっきの、どういう意味です?」
ほぼ素面のあきだが、やっぱり若干の酔いはある。
勢いに任せて、気になることに突っ込んでみた。
「ん?」
「真砂の大事な子っていうの。もしかして真砂課長と深成ちゃんて、付き合ってたりするんですか?」
もしや清五郎だけは本当の関係を知っているのではないか、と、あきは期待に目を輝かせる。
が、清五郎はいつもの爽やかな笑みを浮かべて首を傾げた。
「さぁなぁ。そこまではわからんが、でも気に入ってはいるだろ? 真砂が気に入るなんて、そうないことだし、だとしたら貴重な存在だ。大事だろ?」
「ま、そうですねぇ」
---さすがに清五郎課長でもわかんないか。でもま、誰が見ても真砂課長が深成ちゃんを気に入ってるってのは明らかなわけよね---
あきは小さくなるタクシーを見、次いでそのタクシーを射るような目で睨む真砂を見て、ふふふふ、と笑った。
「こら深成~。駄目じゃないか、六郎さんにまで迷惑かけちゃ~。ほら、二次会行くよ」
「おいおい捨吉。無理強いするなよ」
さりげなく会計を済ませた清五郎が、店の表で手招きする。
捨吉は深成の手を引き、ぐいぐいと店の外に連れ出した。
六郎も慌てて後を追う。
「清五郎課長も、わざわざありがとうございました」
挨拶する六郎に、清五郎は軽く頷き、ちら、と手の中の深成の荷物を見た。
「あんたが派遣ちゃんを送って行くのか?」
「ええ。方向も同じですし、女の子一人では危ないですから」
言うが早いか、六郎は通りかかったタクシーを停めた。
「ほら深成ちゃん。送っていくから、乗って」
捨吉に手を引かれてぼんやりしている深成を呼ぶ。
深成は、じ、と六郎を見、またきょろきょろと辺りを見回した。
「かちょー……」
「うんうん、課長は二次会だよ。だから深成も行くよね~?」
手を引きながら言う捨吉に、深成はこっくりと頷く。
だが六郎は、ぐいっと深成の反対側の手を引いた。
元々深成を捕まえていた捨吉はべろべろなので、あっさりと深成は六郎に奪われる。
「駄目だよ。しんどいだろ? 明日も仕事なんだから、これ以上飲まないほうがいいよ」
「でも、かちょー……」
相変わらず、深成はきょろきょろと真砂を探す。
その真砂は、深成を奪われた捨吉に、がっちりと捕まっていた。
千代も少し酔っているのか、しきりに真砂を誘う。
「六郎さん。ちゃんと送り届けてあげてくださいよ」
散々飲んだのに、ほぼ素面のあきが、目尻をぐぐっと下げて六郎に言った。
「ああ、もちろん」
力強く頷く六郎に、あきは心の中で、ぷぷっと笑った。
---生真面目ねぇ。強引に深成ちゃんを送るかと思えば、この様子じゃ絶対手なんか出さないでしょうね。その点は安心だわ。まぁ真砂課長は内心穏やかじゃないでしょうけど。それにしても……---
目尻が下がりっぱなしのあきは、六郎に促されながらも、相変わらずきょろきょろしている深成を見た。
---深成ちゃん、さっきから『かちょー』しか言ってないじゃない。真砂課長と離れた途端、ず~っと課長を呼ぶなんて。今の不安そうな態度ったら! こういう態度が堪んないんでしょうね。真砂課長も、誰もいなかったら即駆けつけたいところじゃないの?---
にやにやしながら、ちらりと背後を振り返る。
真砂は捨吉に引っ張られ、千代にも絡まれ、六郎に物申す暇もないようだ。
が、ちらちらと視線は深成のほうへと投げられている。
---真砂課長からしたら、心配でしょうね~~~っ!!---
その気になれば、捨吉と千代を投げ飛ばしてでも深成を救いそうだ、と思いつつ、あきは、ぽん、と深成の背を叩いた。
「さ、じゃあ深成ちゃんは送って貰いなよ。大丈夫よ、六郎さんは、そんなに酔ってないから」
にこりと笑って言うあきに、深成はきゅ、と唇を噛んだ。
真砂が来てくれないので泣き出しそうなのかと思っていると、清五郎が、不意にぐしゃぐしゃと深成の頭を撫でた。
「そうだなぁ。派遣ちゃんは、帰ったほうがいいかもな。でも」
一旦言葉を切り、清五郎は、六郎に視線を移した。
「ちゃんと送れよ。真砂の大事な子なんだからな」
少し、六郎が怯むほどの視線で言う。
おお、とあきが、目を見開いて清五郎を見た。
「え、ええ。もちろんです」
深く頭を下げると、六郎は深成を後部座席に乗せた。
では、ともう一度軽く頭を下げると、六郎も乗り込み、タクシーは走り去って行った。
「ねぇ清五郎課長。さっきの、どういう意味です?」
ほぼ素面のあきだが、やっぱり若干の酔いはある。
勢いに任せて、気になることに突っ込んでみた。
「ん?」
「真砂の大事な子っていうの。もしかして真砂課長と深成ちゃんて、付き合ってたりするんですか?」
もしや清五郎だけは本当の関係を知っているのではないか、と、あきは期待に目を輝かせる。
が、清五郎はいつもの爽やかな笑みを浮かべて首を傾げた。
「さぁなぁ。そこまではわからんが、でも気に入ってはいるだろ? 真砂が気に入るなんて、そうないことだし、だとしたら貴重な存在だ。大事だろ?」
「ま、そうですねぇ」
---さすがに清五郎課長でもわかんないか。でもま、誰が見ても真砂課長が深成ちゃんを気に入ってるってのは明らかなわけよね---
あきは小さくなるタクシーを見、次いでそのタクシーを射るような目で睨む真砂を見て、ふふふふ、と笑った。