小咄
「またか。よっぽど真砂が好きなんだなぁ」
清五郎が驚いたように言う。
何気に爆弾発言だが、真砂はそのままの表情で、隅に畳んである布団に目をやった。
「さっきまであれほど怖がってたくせに。何で人の背で、ここまで熟睡出来るんだか」
「それは真砂の背だからだろ」
さらに突っ込みつつ、清五郎は立ち上がって布団を敷いた。
「寝かせておくか」
「そうだな……。つか、こいつ、寝てるくせに離さないんだよな」
首の前で組まれた深成の手を掴んで、真砂が言う。
「でもここで寝かしたら、深成ちゃん、今日は男性陣と一緒に寝ることになりますよ? かといって、この状態でロフトに上がるのは課長も危ないですし」
あきが若干目尻を下げながら、ロフトと傍に敷かれた布団を見比べた。
「その前に、真砂から離れないんだったら、もう真砂もそのまま寝ちまえよ」
さらりと清五郎が凄いことを言う。
真砂的には慣れているとはいえ、さすがに皆の前で大っぴらにそういうことをするのはよろしくない。
一緒にいるのは同僚と部下なのだ。
「こんなもん背中に張り付けたまま寝られるかよ」
「どっちにしろ、派遣ちゃんは真砂と一緒じゃないと安心しないだろ。さっきゆいに、あれだけビビらされたんだから」
「じゃあもう皆今日は下で寝ましょうか。……あ、でもそうすると、捨吉が危険かもですしねぇ」
う~ん、と千代が浴室を見る。
見境なく捨吉を襲うゆいだ。
同じ部屋で寝るなど、この上ないチャンスだろう。
「さすがに俺たちがすぐ傍にいるのに、横で捨吉を襲うことはない……と思いたいが」
清五郎も、う~ん、と首を捻る。
そのとき、浴室のドアが開いて、ゆいが出て来た。
「あ、ゆいちゃん。葉っぱだらけだったけど、怪我なかった?」
あきが声をかけると、ゆいは髪を拭きながら、腕と太腿を示した。
「あっちこっち擦り傷だらけよ。ああ、玉のお肌が」
ぶつぶつ言い、次の瞬間には、ささっとゆいは、捨吉の横に飛んで行った。
「捨吉くん、ごめんねぇ。怪我しなかった?」
「あ、ああ……多分」
捨吉が、ちょっと構えて言う。
ゆいが迫れば迫るほど、捨吉の心は離れて行くようなのだが、ゆいにはわからないのだろうか。
「ゆい。お前、こっちの端で寝ろ」
リビングの一番端っこに布団を敷きつつ言う清五郎に、ゆいは、少し訝しげな顔をした。
「派遣ちゃんが寝入ってるからな。一人で下で寝かすのも可哀想だし、皆で下で寝ようと思うんだが、お前はここだ」
有無を言わさず、ゆいを隔離する。
「え~? あたし、端っこって怖くてヤダぁ~」
他の者の並びを言われなくても、壁際ということは、男性陣からは一番遠いことぐらいわかる。
子供でないのだから、まさか男女交互に寝るわけはないのだし、だとしたら男と女で真っ二つに分かれるはずだ。
となると壁際は、必然的に男性陣からもっとも遠い。
「さっきだって怖い思いしたんだから、あたし、真ん中がいい~」
皆で手分けして敷いた布団の真ん中に座り込もうとする。
が、その首根っこを清五郎が掴んだ。
「そこは真砂だ」
「え、何でぇ?」
「派遣ちゃんがくっついてるんだから、しょうがないだろ」
見るといまだに深成は真砂の背にくっついたままだ。
「何この子。ずるぅい、自分だけ男に引っ付いてさぁ」
「男に引っ付いてるんじゃない。真砂に引っ付いてるんだ。お前が捨吉に引っ付きたがるようなもんだな」
またまた清五郎が爆弾発言をする。
あきはちょっとにまにまと、清五郎と真砂をちらちらと窺った。
今のところ、捨吉とゆいのことは心配なさそうだ。
清五郎が引き離してくれているので、あきは自分の欲望(?)を優先できる。
「え~、もう課長ったらぁ。何言ってるんですか、嫌だぁ~」
赤くなって、ゆいがばしんと清五郎を叩いた。
そして、ぐっと深成の肩に手をかける。
「ほんとに寝てるのぉ? 狸寝入りじゃないの?」
怪力のゆいに引っ張られ、深成の手が、真砂から離れた。
ぐらりと深成の上体が反るように離れる。
「おっと」
真砂が素早く前に屈み、後ろに倒れそうになった深成を背に戻す。
「危ないだろう。このまま落ちたら、後頭部を打つだろうが」
軽くゆいを睨む。
おお、とあきが身を乗り出していると、深成が、うにゃ、と目を擦りつつ薄目を開けた。
「起きたか。離すぞ」
気付いた真砂が、背中の深成の言う。
元々真砂は座っているので、お尻から降りる分には高さはない。
ずりずりと、深成は真砂の後ろに降りた。
が、そのままこてんと横になる。
「あ~あ。折角目が開いたのに、こいつは一旦寝たら、もう朝まで起きないな」
真砂が振り向き、深成を覗き込んで言う。
清五郎が、布団を真砂に渡しながら笑った。
「はは。やっぱりそこは真砂だな。さ、後は皆、適当に散れ」
真砂と深成を中心に左右に分かれ、それぞれ自分の位置を考えた。
清五郎が驚いたように言う。
何気に爆弾発言だが、真砂はそのままの表情で、隅に畳んである布団に目をやった。
「さっきまであれほど怖がってたくせに。何で人の背で、ここまで熟睡出来るんだか」
「それは真砂の背だからだろ」
さらに突っ込みつつ、清五郎は立ち上がって布団を敷いた。
「寝かせておくか」
「そうだな……。つか、こいつ、寝てるくせに離さないんだよな」
首の前で組まれた深成の手を掴んで、真砂が言う。
「でもここで寝かしたら、深成ちゃん、今日は男性陣と一緒に寝ることになりますよ? かといって、この状態でロフトに上がるのは課長も危ないですし」
あきが若干目尻を下げながら、ロフトと傍に敷かれた布団を見比べた。
「その前に、真砂から離れないんだったら、もう真砂もそのまま寝ちまえよ」
さらりと清五郎が凄いことを言う。
真砂的には慣れているとはいえ、さすがに皆の前で大っぴらにそういうことをするのはよろしくない。
一緒にいるのは同僚と部下なのだ。
「こんなもん背中に張り付けたまま寝られるかよ」
「どっちにしろ、派遣ちゃんは真砂と一緒じゃないと安心しないだろ。さっきゆいに、あれだけビビらされたんだから」
「じゃあもう皆今日は下で寝ましょうか。……あ、でもそうすると、捨吉が危険かもですしねぇ」
う~ん、と千代が浴室を見る。
見境なく捨吉を襲うゆいだ。
同じ部屋で寝るなど、この上ないチャンスだろう。
「さすがに俺たちがすぐ傍にいるのに、横で捨吉を襲うことはない……と思いたいが」
清五郎も、う~ん、と首を捻る。
そのとき、浴室のドアが開いて、ゆいが出て来た。
「あ、ゆいちゃん。葉っぱだらけだったけど、怪我なかった?」
あきが声をかけると、ゆいは髪を拭きながら、腕と太腿を示した。
「あっちこっち擦り傷だらけよ。ああ、玉のお肌が」
ぶつぶつ言い、次の瞬間には、ささっとゆいは、捨吉の横に飛んで行った。
「捨吉くん、ごめんねぇ。怪我しなかった?」
「あ、ああ……多分」
捨吉が、ちょっと構えて言う。
ゆいが迫れば迫るほど、捨吉の心は離れて行くようなのだが、ゆいにはわからないのだろうか。
「ゆい。お前、こっちの端で寝ろ」
リビングの一番端っこに布団を敷きつつ言う清五郎に、ゆいは、少し訝しげな顔をした。
「派遣ちゃんが寝入ってるからな。一人で下で寝かすのも可哀想だし、皆で下で寝ようと思うんだが、お前はここだ」
有無を言わさず、ゆいを隔離する。
「え~? あたし、端っこって怖くてヤダぁ~」
他の者の並びを言われなくても、壁際ということは、男性陣からは一番遠いことぐらいわかる。
子供でないのだから、まさか男女交互に寝るわけはないのだし、だとしたら男と女で真っ二つに分かれるはずだ。
となると壁際は、必然的に男性陣からもっとも遠い。
「さっきだって怖い思いしたんだから、あたし、真ん中がいい~」
皆で手分けして敷いた布団の真ん中に座り込もうとする。
が、その首根っこを清五郎が掴んだ。
「そこは真砂だ」
「え、何でぇ?」
「派遣ちゃんがくっついてるんだから、しょうがないだろ」
見るといまだに深成は真砂の背にくっついたままだ。
「何この子。ずるぅい、自分だけ男に引っ付いてさぁ」
「男に引っ付いてるんじゃない。真砂に引っ付いてるんだ。お前が捨吉に引っ付きたがるようなもんだな」
またまた清五郎が爆弾発言をする。
あきはちょっとにまにまと、清五郎と真砂をちらちらと窺った。
今のところ、捨吉とゆいのことは心配なさそうだ。
清五郎が引き離してくれているので、あきは自分の欲望(?)を優先できる。
「え~、もう課長ったらぁ。何言ってるんですか、嫌だぁ~」
赤くなって、ゆいがばしんと清五郎を叩いた。
そして、ぐっと深成の肩に手をかける。
「ほんとに寝てるのぉ? 狸寝入りじゃないの?」
怪力のゆいに引っ張られ、深成の手が、真砂から離れた。
ぐらりと深成の上体が反るように離れる。
「おっと」
真砂が素早く前に屈み、後ろに倒れそうになった深成を背に戻す。
「危ないだろう。このまま落ちたら、後頭部を打つだろうが」
軽くゆいを睨む。
おお、とあきが身を乗り出していると、深成が、うにゃ、と目を擦りつつ薄目を開けた。
「起きたか。離すぞ」
気付いた真砂が、背中の深成の言う。
元々真砂は座っているので、お尻から降りる分には高さはない。
ずりずりと、深成は真砂の後ろに降りた。
が、そのままこてんと横になる。
「あ~あ。折角目が開いたのに、こいつは一旦寝たら、もう朝まで起きないな」
真砂が振り向き、深成を覗き込んで言う。
清五郎が、布団を真砂に渡しながら笑った。
「はは。やっぱりそこは真砂だな。さ、後は皆、適当に散れ」
真砂と深成を中心に左右に分かれ、それぞれ自分の位置を考えた。