傷ついてもいい
「よっこいしょ、は、ないんじゃないの?佳奈さん」

ふははは、と直己は笑っている。

「しゃあない、おばさんだかんね」

くだらない会話をしながら直己は、すいっと鍵をカウンターに置いた。

「前に話してた会社の資料、あったよ」

佳奈は、鍵をポケットに入れながら、会話をさりげなく続ける。

なかなか芝居もうまくなってきた、と自分で感心した。

「あー、ありがとね」

直己は、こんなだが、英語が堪能で、一流商社に就職を希望していた。

資料を受けとると、じゃあねえ、と直己は、事務所から去って行った。


またよっこいしょ、と席に着く。

「しかし、懐かれてるね、佳奈も」

麻衣子が、ニヤニヤしながら言う。

「相澤くんってさ、凄いんでしょ?なんか住んでるとこ追い出されてから、女の子達の部屋、転々としてるって。まあねえ、あのルックスだもんな。転々と出来るわなあ」

麻衣子は、感心したように直己が去って行ったほうを見た。

「ふうん」

そんな噂が流れてるのか、と佳奈は内心ヒヤヒヤした。



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