傷ついてもいい
「どうしたの?そんな汗かいて」

6月だけれど、今日は曇り空で少し肌寒い。

「え?あ、寝坊しちゃって」

「電車の中でも焦ってた?」

直己は、クスリと笑う。

「うん!そうそう」

佳奈は、必死に言い訳をしながらハンカチで汗を拭った。


佳奈は、いつもより早足で歩き、直己にあわせてみた。

肩越しに直己の匂いがして、佳奈は切なくなる。

「あのさ、佳奈さん」

直己は、不意に話しだした。

「え?」

「俺、大学辞めるよ」

「…そう」

佳奈は心臓をバクバクさせながらも、なんと言っていいのかわからなかった。

「なんかさあ、大学出ても、どうせ一流企業とか入れないんなら、意味ないよな、金もったいねえなあとか思ってさ」

「そっか」

直己の嘘が佳奈の胸にささってくる。

確かに佳奈に話しても仕方のないことだけれど。

佳奈は、さみしくて、ただ直己の嘘を聞いていた。
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